月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
« 11月 | ||||||
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |
コラム
119 【相続問題】遺産をどのように分割するのか
2023年01月2日
なお、審判手続は、家庭裁判所(家事審判官)の判断でもって紛争を解決する手続です。遺産分割の前提問題に争いがある場合であっても、家庭裁判所が、審判において判断を示して解決を図ることができるのではないか、とも考えられるところです。
この点に関して、最高裁判所昭和41年3月2日決定は、遺産分割の前提となる事実関係について、家庭裁判所が一定の判断をした上で審判することはできる、としつつも、前提となる事実関係に関する家庭裁判所の判断は既判力を有しないので、審判を受け入れない当事者が、あらためて民事訴訟手続で争うことは妨げられないし、民事訴訟手続での判決が、家庭裁判所の審判と抵触する内容であるならば、その限度で審判は効力を失う、という趣旨のことを述べています(最高裁判所昭和41年3月2日決定より抜粋「右遺産分割の請求、したがつて、これに関する審判は、相続権、相続財産等の存在を前提としてなされるものであり、それらはいずれも実体法上の権利関係であるから、その存否を終局的に確定するには、訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならない」、「しかし、それであるからといって、家庭裁判所は、かかる前提たる法律関係につき当事者間に争があるときは、常に民事訴訟による判決の確定をまってはじめて遺産分割の審判をなすべきものであるというのではなく、審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことは少しも差支えないというべきである」、「審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解されるからである」)。
このような最高裁判所の考え方を前提とすると、遺産分割の前提問題に争いがある場合、家庭裁判所が審判をしたとしても、これを不服とする相続人は、民事訴訟を提起して争う余地が残る、ということになるわけですから、抜本的解決を図るためには、やはり、審判へ至る前に、民事訴訟を経ることを検討せざるを得ない、と考えられます。
遺産分割の前提問題に関する争いを、民事訴訟を通じて解決した後、あらためて遺産分割協議をする、ということになれば、最終的な解決に至るまでにかなりの時間と労力を要することになるのは明らかです。
そのようなことから、遺産分割に関する争いが生じた場合には、できる限り早期に、資料に基づき全体像を把握し、争点を把握した上、解決するための手続を踏まえ、どの程度の時間と労力を要するのかを把握することが必要です。
続く
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
名古屋市中区錦2丁目8番23号
キタムラビル401号
(地下鉄伏見駅1番出口・丸の内駅6番出口各徒歩約2分)
▷法律相談のお申し込みは