コラム

130 【相続問題】遺言内容の実現には遺言執行者による対応が必須なのか?

2023年10月23日

遺言は、自分で作成する方法(自筆証書遺言)と公証人役場で作成してもらう方法(公正証書遺言)がありますが、いずれの方式によるにしても、遺言で定めた内容を実現するために、遺言執行者による対応(遺言執行)が必要となるケースがあります。

 

まず、法律上、遺言執行者による対応が求められているケースがあります。

例えば、認知は遺言によってすることもできる、とされていますが(民法781条2項)、この類型の認知は、戸籍法上、遺言執行者が手続を行うことが予定されています(戸籍法64条)。法律上、遺言執行者による対応が求められている、ということになります。

 

 

遺言では、遺産たる財産を誰が取得するのかについて定めることが一般的ですが、これを実現するため、遺言執行者による対応が必要となるでしょうか。

 

この問題を考える上で、遺言によるのではなく、法定相続人間の遺産分割協議によって遺産たる財産の帰属を定めるケースについて考えてみたいと思います。

この場合、各相続人は、遺産分割協議の効力に基づき、遺産たる財産を取得することになりますので、遺言執行者による対応は不要です。

 

そして、遺言において、法定相続人のある者に遺産たる財産を「相続させる」と定めた場合、この遺言は遺産分割方法を指定したものと考える、という扱いがなされています。同旨を述べる最高裁判所判決があることによります(最高裁判所平成3年4月19日判決)。

ですから、「相続させる」遺言で法定相続人が遺産たる財産を取得するケースでは、遺言執行者の対応は不要と考えられる、ということになります。

 

 

これに対して、遺言で、法定相続人ではない第三者に遺産たる財産を取得させる旨を定めるケースは、どのように考えられるでしょうか。

 

例えば、遺言で、第三者Aに遺産たる不動産(土地建物)を取得させる旨を定めたとすると、第三者Aが不動産の所有権を確定的に取得するためには、登記名義を第三者Aに移転する必要があります。 

不動産登記手続は、不動産所在地を管轄する法務局に対して申請して行いますが、登記手続は、登記権利者(登記により利益を受ける者)と登記義務者(登記により不利益を受ける者)による共同申請が原則とされています(不動産登記法60条)。

そのため、前記の例では、第三者A(登記権利者)と、法定相続人全員、あるいは遺言執行者(登記義務者)による共同申請が必要になる、と考えられます。

法定相続人全員に協力を求めることができないというなら、遺言執行者に対応してもらうことを考えなければなりません。

 

では、遺言で、第三者Aに遺産たる預貯金を取得させる旨を定めたとすると、預貯金の払い戻しを受けるためには、遺言執行者の対応は必要となるでしょうか。 

直近で私自身が経験したところでは、ある金融機関の対応は、遺言執行者が選任されていないならば遺言執行者の対応は必要ではない、遺言によって遺産たる預貯金を取得するとされた第三者Aによる申請があれば払い戻しに応じる、というものでした。

もっとも、別のある金融機関の対応は、遺産たる預貯金の払い戻しには、法定相続人全員、あるいは遺言執行者の対応が必要である、というものでした。 

令和5年10月現在、この問題は金融機関ごとに対応が異なるようです。その理由は、色々と思い付くところではありますが、正確なところは分かりません。

 

  

このような遺言執行者の指定は、遺言ですることができます(民法1006条)。遺言執行者がいない場合、家庭裁判所が、利害関係人の請求によって選任することになります(民法1010条)。

なお、遺言執行者は、任務開始後、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない(民法1007条)、相続財産目録を作成して相続人に交付しなければならない(民法1011条1項)、とされています。また、遺言執行者は、相続財産(遺産)から報酬を取得できる立場にあります。その金額は、遺言で定めたところによるものとされ、遺言に定めがなければ家庭裁判所が定めたところによるものとされています(民法1018条)。

これらのことは、遺言執行者の選任を請求するにあたり留意されるべきです。

 

 

弁護士 八木 俊行

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