コラム

129 自転車の通行方法は道路交通法で定められています

2023年10月17日

 日々の生活の中で、驚くような自動車の運転を目にすることがあります。

 信号の変わり目で明らかに赤信号に変わっているのにそのまま交差点に進入する、信号のない交差点手前の横断歩道のさらに手前に一時停止規制があるのに、一時停止せずに交差点に進入する、さらにはノーブレーキで進入するなど。

 

 自動車の通行方法は道路交通法で詳細に定められています。これらはいずれも道路交通法違反ですね。

 自動車の運転に道路交通法の適用があることや、どのような通行方法が同法違反であるのか、といったことは、ある程度は知られているのではないかと思います。

 

 では、自転車も道路交通法の適用対象であること、その上でどのような通行方法が求められているのかといったことは知られているでしょうか。

 

 道路交通法上、「車両」は、歩道又は路側帯と車道の区別のある道路では、車道を通行しなければなりません(道路交通法17条1項)。

 そして、「車両」は、道路(歩道等と車道の区別がある道路では車道)の中央から左の部分を走行しなければなりません(道路交通法17条4項)。

 規制対象となる「車両」は、具体的に何を指すでしょうか。

 自動車や原動機付自転車は、もちろんこれに含まれます(道路交通法2条1項8号)。

 また、「軽車両」も「車両」これに含まれます(道路交通法2条1項8号)。

 そして、自転車は「軽車両」に含まれます(道路交通法2条1項11号)。

 

 ですから、自転車は、道路交通法上、歩道と車道の区別のある道路では、車道の左側を通行しなければなりません。これが原則的な取り扱いです。

 

 もっとも、自転車(厳密には「普通自転車」)は、次のいずれかに該当する場合には、例外的に、歩道を通行することができます(道路交通法63条の4第1項1~3号)。

一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。

二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。

三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

 

 つまり、

①自転車が歩道を通行して良い旨の標識がある

②自転車運転者が13歳未満の子供、あるいは70歳以上の高齢者である

③車道または交通の状況に照らして自転車の通行の安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ないと認められる

のいずれかの場合には、自転車は、例外的に歩道を通行して良い、ということになります。

 

 ただ、この場合であっても、自転車は、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりませんし、歩行者の通行を妨げるときは一時停止しなければなりません(道路交通法63条の4第2項)。

 

 

 自転車運転者のうち、いったいどれくらいの割合の方がこの規制の存在を認識されているでしょうか。

 

 歩道では歩行者が安全に通行できるはずですが、私自身、いまだに歩道を歩いていて、至近距離を、自転車がものすごい速度で走行していくなどするために身の危険を感じることがあります。

 

 自動車を運転するためには、各都道府県公安委員会より免許を受けなければなりません(道路交通法84条以下)。当然ながら、免許取得の課程で道路交通法を学ぶ機会があります(それでも、自動車の運転に際して道路交通法が守られていないことがあります)。

 他方、自転車の運転に免許は不要であり、自転車運転者が道路交通法を学ぶ機会はありません。自転車運転者が道路交通法を知らないのは当然のことであり、道路交通法違反の自転車の通行がなくならないのも当然のことです。

 

 この状況がいつまでも放置されているのは、全く不合理なことだと思います。

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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