コラム

103 「いじめ」と不法行為責任(3)

2019年08月9日

先回からの続き

 大津地方裁判所が平成31年2月19日に下した判決の概要は次のとおりです。

 

 (判決の対象となった損害賠償事件の概要)
 この事件は、自殺を遂げた少年Xの父である甲と母である乙が原告となり、Xが通学する中学校の同級生であるA1、その父母であるA2及びA3、同じく同級生であるB1、その母であるB2、B2の配偶者であるB3、Xと同学年であるものの他クラスに在籍したC1、その父母であるC2及びC3の合計9名を被告として、Xが死亡したことによる損害の賠償を求めて提起されたものでした。

 

 (判決の結論)
 第一審となる大津地方裁判所平成31年2月19日判決は、X1と同級生であったA1、B1の不法行為責任を肯定し、両名で連帯して、原告甲に対しては約1878万円及び所定の遅延損害金を、また原告乙に対しては約1878万円及び所定の遅延損害金を、それぞれ支払うよう命じました。

 なお、C1や、その他の父母らの不法行為責任は認めませんでした。

 

 (判決における事実認定・被告らの共同不法行為の成否)
 判決によれば、XとA1やB1は、中学2年生で同クラスとなり関係を深めていったものの、9月になり2学期に入ってから関係性が変わり、Xは10月中旬に自殺に至った、ということです。

 判決中、関連部分を抜粋します。

 「亡Xは、共通の趣味であるゲームを通じて親しくなった被告A1及び被告B1との間で友人関係を形成し、1学期から夏休みを通じてその関係を次第に深めていったが、2学期に入ると被告A1及び被告B1が仕掛ける側、『いじる』側、亡Xが仕掛けられる側、『いじられる』側という関係が固定化し、これが、被告A1及び被告B1において、亡Xを格下と位置付ける意識の形成につながり、被告A1及び被告B1のこうした意識が亡Xに対する暴行などの厳しい対応となって現れるようになり、行為が更にエスカレートしていったことが認められる。そして、こうした行為は、それ自体が亡Xに心理的負荷を与えることに加え、被告A1及び被告B1との友人関係の崩壊と上下関係の構築・固定化に伴う亡Xの強い孤立感・無価値感の形成に結び付いていったということができる」(判決から引用)

 「被告A1及び被告B1と亡Xとの関係に変化がみられるようになったのは2学期に入ってからであり、亡Xが自殺したのは10月11日であったことから、僅か1か月余りの間に自殺に至ったことになる」(判決から引用)

 

 裁判所の判決ですから、A1やB1のXに対する行為に関しては具体的事実が認定されています。戦慄を覚える部分も多々あり、各行為の具体的内容に関する部分は引用を控えます。

 

 そして、判決は、A1とB1には、Xに対する関係で共同不法行為が成立すると認めました。

続く

弁護士 八木 俊行

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