コラム

104 「いじめ」と不法行為責任(4)

2019年08月10日

先回からの続き

 (判決における事実認定・被告らの共同不法行為の成否)
 判決は、次のように述べ、A1とB1に共同不法行為が成立すると認めました。

 

 「被告A1及び被告B1は(中略)2学期以降、亡Xに対する暴行等の個々の行為を通じて心理的負荷を与えるとともに、これらの行為の積み重ねの中で、亡Xとの間に形成・深化されていった友人関係を、仕掛ける側と仕掛けられる側、『いじる』側と『いじられる』側という関係に変容させ、上下関係の構築・固定化に結び付け、そのような関係性の中で、亡Xを精神的に追い詰める行動を積み重ねていった」(判決から引用)

 「被告A1及び被告B1の亡Xに対する行為を個別に取り上げて自殺との結び付きにおいて違法な権利侵害か否かについて評価するのは相当ではなく、これらの行為の積み重ねが、全体として、亡Xに対し、希死念慮を抱かせるに足りる程度の孤立感・無価値感を形成させ、さらに、このような関係が今後も継続するなどの無力感・絶望感を形成させるに足りるものであって、かつ、各自が、亡Xとの上記のような関係性の下において、他方の行為の主要部分を相互に認識しながらそのような行為に及んでいたのであれば、被告A1及び被告B1の一連の行為が、一体として、亡Xが自殺するという生命侵害との関係において、違法な権利侵害行為に該当し、かつ、これらの行為を相互の意思関与の下に共同したと評価することができると解される」(判決から引用)

 

 「本件においては、(中略)以下の経過が存在した。すなわち、被告A1及び被告B1の行為は、(中略)などエスカレートし、その結果、仕掛ける側と仕掛けられる側、『いじる』側と『いじられる』側という役割の固定化を生じさせるに至った」(判決から引用)

 「被告A1及び被告B1は、(中略)遊びという名の下に、(中略)と、友人間のいたずらの域を大きく逸脱する行為に及ぶようになった」(判決から引用)

 「被告少年らは、体育祭において、亡Xに対し、(中略)など、周囲に極めて強烈な印象を与える内容であり、かつ、他のゲーム参加者との間に著しく均衡を欠く罰ゲームを亡Xに行った。そして、10月3日から同月5日及び同月7日には、被告A1が(中略)などして教諭らが介入するなどの事態が続き、同月8日に被告B1が被告C1と共に亡Xの自宅を前触れなく訪問して(中略)した」(判決から引用)

 

 「これらの一連の行為の積み重ねは、亡Xに対し、希死念慮を抱かせるに足りる程度の孤立感・無価値感を形成させ、さらに、被告少年らとの関係からの離脱が困難であるとの無力感・絶望感を形成させるに十分なものであったというべきであるから、これらの一連の行為が、一体として、亡Xが自殺するという生命侵害との関係において、違法な権利侵害行為に当たり、かつ、被告A1及び被告B1は、お互いの亡Xに対する行為の主要部分を十分に認識していたのであるから、これらの行為を相互の意思関与の下に共同したということもできる(判決から引用)

 

 そして、判決は、A1とB1の共同不法行為とXの自殺との因果関係も認めました。

続く

弁護士 八木 俊行

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