コラム

43 結婚と離婚の法律問題(5)

2019年03月10日

先回からの続き

 

 先回まで、婚姻はどのような場合に成立するのか、ということについて記載してまいりましたが、婚姻が成立すると、どのような法律的効力が生じるのでしょうか。婚姻の効力のうち、主なものを挙げれば、次のようになります。

 

<婚姻の効力> 

①夫婦の氏

 婚姻した夫婦は、夫、または妻の氏を称するものとされています(民法第750条)。いずれの氏を称するのかは、婚姻の際に選択しなければなりません。具体的には、婚姻が成立するためには役所への婚姻届の提出が必要となりますが、婚姻届には「夫婦が称する氏」を記載しなければなりません(戸籍法第74条1号)。 

 このように、現行の法制度では、夫婦は必ずいずれかの氏を称するものとされており、夫婦が別々の氏を称すること(夫婦別姓)は認められていません。

 では、現実には、いずれの氏が選択されているのでしょうか。

 この点については、厚生労働省による「平成28年度人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』の概況」という統計があり、これによれば、平成27年においては、夫妻とも初婚の夫婦のうち、夫の氏を選択した夫婦は全体の97.1パーセント、妻の氏を選択した夫婦は全体の2.9パーセントであったということです。

 同統計によると、昭和50年においては、夫の氏を選択した夫婦は全体の99パーセント、妻の氏を選択した夫婦は全体の1パーセントであったということですから、時の経過と共に、徐々に妻の氏を選択する夫婦も増えつつある、ということではありますが、現在もなお圧倒的多数の夫婦は夫の氏を選択していることが明かです。夫婦は夫の氏を名乗るもの、という意識は、なお広く国民に共有されているということなのでしょう。

 

 このような社会状況からすれば、婚姻に際して妻の氏を選択することは困難であり、女性は、婚姻に際し、夫となるべき者の氏へ変更することを事実上強制されているのではないか、と評価することもできそうです。

 このような現状を前提としつつ夫婦別姓を認めない現行の法制度について、両性の本質的平等を定めた憲法第24条1項等に違反するのではないかが争われた事件で、最高裁判所平成27年12月16日判決は、次のように述べ、婚姻前の氏を婚姻後も通称として使用できることも踏まえ、結論として現行制度は憲法違反ではないとの判断を示しています。

 「氏は、家族の呼称としての意義があるところ、現行の民法の下においても、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」

 「夫婦が同一の氏を称することは、上記の家族という一つの集団を構成する一員であることを、対外的に公示し、識別する機能を有している」

 「家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できるところである」

 「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではなく、夫婦がいずれの氏を称するかは、夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている」

 「夫婦同氏制の下においては、婚姻に伴い、夫婦となろうとする者の一方は必ず氏を改めることになるところ、婚姻によって氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない」

 「氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば、妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。さらには、夫婦となろうとする者のいずれかがこれらの不利益を受けることを避けるために、あえて婚姻をしないという選択をする者が存在することもうかがわれる」

 しかしながら、「夫婦同氏制は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく、近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ、上記の不利益は、このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る

 

 夫婦別姓の問題は、かねて法改正により対応するべきか議論されてきたわけですが、現時点では改正されるという方向性は示されていません。

続く

名古屋/伏見通法律事務所 

弁護士 八木 俊行