月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
« 11月 | ||||||
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |
コラム
67 刑事事件と被疑者の身柄拘束~逮捕・勾留は懲罰か~①
2019年04月28日
この数日、刑事事件と身柄拘束に関するいくつかの報道を目にしました。4月26日付毎日新聞の朝刊には、「なぜ逮捕されぬ」との見出しで、東京・池袋で発生した事故についての記事が掲載されていました。
一般論として、刑事事件と被疑者の身柄拘束について考えてみたいと思います。
「悪いことをすると警察に捕まる」というのは、この国で暮らす人々に共有されている常識の一つであろうと思います。
たしかに、刑法犯を犯した疑いがある者(被疑者)は警察に逮捕されることがあります。
しかしながら、すべての被疑者が逮捕されるわけではありません。
警察や検察といった捜査機関が、捜査段階において被疑者を逮捕し、勾留することができるのはなぜでしょうか。何を目的として身柄拘束は行われるのでしょうか。懲罰のためでしょうか。あるいは、被疑者の取り調べをスムーズに行うためでしょうか。
そもそも、捜査機関が行う捜査の目的は何でしょうか。
それは、ある被疑事実について裁判所による刑事裁判手続を求めるか否か、すなわち起訴するか否かを判断することにほかなりません。
我が国では、刑事裁判においては、検察官によって審理のテーマとされた起訴状記載の犯罪事実(公訴事実)が証拠によって認められるか否かが問われます(刑事訴訟法第317条「証拠裁判主義」)。犯罪事実が証拠によって認められるならば有罪となり、法律で定められた刑罰の範囲内で、適切と考えられる刑が選択されるという量刑の問題となります。
ですから、捜査の結果、刑法犯にあたる事実が認められない、あるいは、その疑いはあるもののこれを認めるに足りる証拠がない、と考えられるならば、刑事裁判を求めることはできません。刑法犯にあたる事実を認めるに足りる証拠はあるとしても、その他の事情を総合的に考慮すれば、わざわざ刑事裁判を求める必要はない、という場合もあるでしょう。
捜査の目的は、ひとえに捜査機関が認知した被疑事実について刑事裁判を求めるか否かを見極めることにある、と言えます。
そのような捜査の過程で、警察や検察といった捜査機関が被疑者を逮捕し、さらに勾留する場合があります。
これらの身柄拘束は、「行政権」たる捜査機関とは別個の「司法権」たる裁判所が、被疑者の身柄拘束を許容する根拠となる令状(逮捕状、勾留状)を交付することで実施されるわけですが、この過程においては「身柄拘束の理由」と「身柄拘束の必要性」が認められるか否かが問われます。
ここに「身柄拘束の理由」とは、その者が犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由であり、「身柄拘束の必要性」とは、逃亡のおそれ、あるいは証拠隠滅のおそれが認められることです。
「身柄拘束の必要性」に関して、逮捕、勾留のそれぞれについて、明文上、次のように定められています。
<逮捕>
刑事訴訟規則
第143条の3(明らかに逮捕の必要がない場合)
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
<勾留>
刑事訴訟法
第60条(勾留の理由、勾留の期間)
1 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2~3省略
長くなりましたので、2回に分けたいと思います。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
名古屋市中区錦2丁目8番23号
キタムラビル401号
(地下鉄伏見駅1番出口・丸の内駅6番出口各徒歩約2分)
▷法律相談のお申し込みは