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コラム
128 「ステマ規制」・事業者が第三者に表示を依頼することは一切許されなくなったのか?~②
2023年10月15日
先回からの続き
消費者庁ホームページに、令和5年3月28日消費者庁長官決定『「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準』が掲載されています。
令和5年10月現在、新たな規制に関する重要な解釈指針と考えられますが、これには次のような記載があります。
「告示が対象とするのは、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示のように見えるものである」(1頁)
「景品表示法は、第5条において、事業者の表示の内容について、一般消費者に誤認を与える表示を不当表示として規制するものであるところ、外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である」(2頁)
「事業者が第三者をして行わせる表示が事業者の表示となるのは、事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合」(3頁)
「事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる」(4頁)
「事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たらない」(5頁)
「第三者が自らの嗜好等により、特定の商品又は役務について行う表示であって、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、通常、事業者が表示内容の決定に関与したとはいえないことから、事業者の表示とはならない」(5頁)。
「「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合」を判断するに当たっては、第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないか、事業者から第三者に対し、表示内容に関する依頼や指示があるか、第三者の表示の前後において、事業者が第三者の表示内容に対して対価を既に提供しているか、過去に対価を提供した関係性がどの程度続いていたのか、あるいは今後提供することが決まっているか、今後対価を提供する関係性がどの程度続くのかなど、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるか否かによって判断する。また、「事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるか否か」の判断に当たっては、表示の対象となった商品又は役務の特性等(例えば、特定の季節のみに販売数量が増える商品であるか。)の事情を考慮する」(5頁)
「上記の事情を踏まえ、「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合」、つまり、事業者の表示とならない場合としては、例えば、以下のような場合が考えられる。
「ア 第三者が事業者の商品又は役務について、SNS等に当該第三者の自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む。)を行う場合」
「イ 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合」
「ウ アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合」
「エ ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて、当該事業者の商品等の表示を行う場合」
「オ ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合」
(引用終わり)
これを踏まえると、事業者が「自己の供給する商品又は役務の取引」に関する第三者の表示に関与する場合について、次のように整理できるように思われます。
①事業者が表示内容の決定に関与する場合、規制対象となる。
事業者が、第三者に対して、特定内容の表示を行うよう明示的に依頼等していない場合でも、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合、事業者が表示内容の決定に関与したものとして、やはり規制対象となる。
②他方、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるならば、規制対象とならない。
第三者の自主的な意思による表示内容と認められるか否かは、事業者と第三者の間で表示内容について情報のやり取りが直接または間接的に一切行われていないかなど、客観的な状況に基づき判断する。
このことは、事業者が、第三者に対して表示を行うことを依頼する場合であっても同じである。
また、事業者が、第三者に対して、自らの商品又は役務を無償で提供する、あるいは、投稿に対する謝礼として割引クーポン等を配布する場合であっても同じである。
以上のところから、事業者が、第三者に対して表示を行うよう依頼したとしても、表示内容の決定に関与していないと認められるならば、規制対象外であり許容される、ということになります。
今後、新たな規制は、現実社会でどのように運用されるのでしょうか。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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