コラム

127 「ステマ規制」・事業者が第三者に表示を依頼することは一切許されなくなったのか?~①

2023年10月13日

 少し前の話ですが、令和5年10月1日の読売新聞朝刊に、同日から、インターネット上で個人の感想を装って特定の商品を宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」が禁止されることになった、との記事がありました。

 記事によれば、「ステマは消費者を欺く行為だが、日本ではこれまで直接規制する法律がなく、消費者庁は景品表示法で定める不当表示に指定した」とのことです。

 

 法律的には、次のようなことです。

 

 不当景品類及び不当表示防止法(通称「景品表示法」)という法律があります。

 これは、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする」(同法1条)法律です。

 同法5条は、「不当な表示の禁止」として、事業者が、自己の供給する商品又は役務の取引について一定内容の表示をすることを禁止しており、5条3号は、禁止される表示として、

 「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」

と定めています。

 この「内閣総理大臣が指定するもの」として、今般、新たに、

「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」

との要件が定められました。

 

 事業者が、景品表示法5条に反する表示をした場合、内閣総理大臣は、再発防止に必要な事項等を命じることができ(同法7条)、事業者がさらにこれに違反した場合、刑事罰の対象となります(同法36条1項。2年以下の懲役または300万円以下の罰金)。

 

 

 新たな規制対象は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」です。

 したがって、消費者など、事業者以外の第三者が行う表示は規制対象にはなりません。

 これは当然のことのようにも思われますが、第三者が行う表示について、事業者が何らかの関与をするような場合については、どのように考えられるのでしょうか。

 例えば、事業者が、「自己の供給する商品又は役務の取引」に関し、表示内容を決定し、何らかの報酬を付与する、あるいはその約束をして第三者に表示をしてもらうとすれば、これはまさに規制対象となるものと考えられます。

 では、事業者が、表示内容を決定せず、第三者に対し、「何らかの表示をして欲しい」と依頼した場合はどうでしょうか。表示に関し、報酬を付与せず、その約束もしなかったとしたらどうでしょうか。

 長くなりましたので、2回に分けて記載します。      続き 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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