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コラム
126 【相続問題】相続で取得した土地を国庫に帰属させることができる場合
2023年10月11日
令和5年10月4日の読売新聞朝刊に、「相続地国有化初適用」、「富山の2件」とのタイトルで記事がありました。記事によれば、「法務省は3日、不要な相続土地を手放して国有地にできる新制度を利用して、初めて富山県内の土地2件を国の財産にしたと発表した」、「2件はいずれも宅地」、「8月末時点で各地の法務局には885件の申請があり、登記の地目別では田畑が約4割、宅地が約3割、山林が約2割だった」ということです。
土地は所有権の対象であり、土地所有者は、所有する土地を管理処分する権限を有します。これは、所有者以外の第三者は、その土地に手を出すことはできない、ということでもあります。
このような仕組みの前提には、土地所有者は、所有する土地から経済的利益を得るため、これを適切に管理処分するはずだ、という想定があったはずで、所有者不明の土地が頻出するという状況は想定されていなかったのでしょう。
そのようなことで、所有者不明土地の問題に対処するため、令和3年(2021年)にいくつかの立法がなされていました。
その一環として、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(通称「相続土地国庫帰属法」)が制定され、令和5年4月から施行されています。前記の新聞記事は、この新法の適用状況に関するものです。
土地所有権には、さまざまな義務が伴います。固定資産税の負担もその一つですし、更地であれば、自生する雑草の除去といった管理に関する負担もあるでしょう。負担を免れるべく売却しようにも、買い手がつかないこともあるかも知れません。
相続で土地を取得したものの負担ばかりが生じるというなら、早期に手放したい、と考えるのも当然のことです。
相続土地国庫帰属法は、相続を契機として土地を取得した場合、一定要件を満たすならば、申請により土地の国庫への帰属を認める、というものです。
申請対象となる土地は、「建物が建っていない」、「担保権などの権利が設定されていない」などいくつかの要件を満たす必要があり(同法2条3項)、法務大臣は、「崖があり、通常の管理にあたり過分の費用・労力を要する」などのいくつかの要件に該当しないことを確認した場合、国庫帰属を承認することとされています(同法5条)。
申請には政令所定の手数料を要します(同法3条2項)。その金額は、土地一筆あたり1万4000円のようです(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令3条)。
また、法務大臣の承認があったとき、政令所定の負担金の納付を要します(同法10条)。前記政令によれば、その金額は、対象土地の地目と地積に応じて異なるものとされており、一律ではありません。土地の状況によっては相当程度高額となることもあり得るように思われます(同施行令5条)。
前記法律は17条の条文から、前記施行令は8条の条文からなるもので、いずれも分量は多くありません。ご興味がおありの方は、まずはこれらをご一読いただくと良いと思います。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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