コラム

113 法曹養成に関する制度改革とその方向性の修正(1)

2019年09月22日

 裁判官、検察官、弁護士を法曹と言いますが、法曹になるためには、限られた例外を除き、司法修習を終える必要があります。法律上の根拠は次の通りです。

<裁判所法> 
第四十三条 判事補は、司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。

<検察庁法> 
第十八条 二級の検察官の任命及び叙級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 司法修習生の修習を終えた者
二 裁判官の職に在つた者 
三 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は准教授の職に在つた者 

<弁護士法> 
第四条 司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。

 

 また、司法修習生となるためには、司法試験に合格する必要があります。

<裁判所法> 
第六十六条 司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。

 

 そして、現在、司法試験を受験するためには、法科大学院を卒業する、あるいは司法試験予備試験に合格する必要があります。

<裁判所法> 
第四条 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において受けることができる。
一 法科大学院(中略)の課程(中略)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間 
二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間

 

 司法試験予備試験はあくまで例外と位置付けられていますから、現行制度では、法曹になるためには原則として法科大学院に入学し、卒業することが求められている、ということになります。

 

 かつては司法試験の受験資格に特に制約はありませんでしたが、司法制度改革の一環として制約が設けられることになりました。

 司法制度改革は、日本司法支援センター(法テラス)の設立(2006年4月設立)や刑事事件における裁判員裁判の導入(2009年5月施行)など、既存制度のさまざまな部分を改革するものでしたが、その中でも、「司法試験合格者の増加(急進的な増加)」と「法科大学院を中核とする法曹養成制度の導入」については、ある時期からさまざまな批判がなされていたと記憶します。政府の審議会でも有識者による議論がなされていました。

 制度改革によって問題が生じていることは間違いないように思われましたし、この問題について知れば知るほど、改革の方向性について早期に抜本的な修正がなされてしかるべきではないかと思われました。

 しかしながら、結局、制度改革の方向性について抜本的な修正がなされることはありませんでした。政府が方針を決め、現実にさまざまな施策が開始してしまった以上、よほどのことがない限り、政府自ら方向性を抜本的に修正するのは難しいことなのでしょう。

続く

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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