コラム

110 相続を放棄できる3か月とは?(最高裁令和元年8月9日判決)(4)

2019年08月17日

先回からの続き

 本コラム冒頭で引用した通り、2019年8月11日付毎日新聞朝刊に、令和元年(2019年)8月9日の最高裁判所判決に関し、「死亡した父が伯父の債務を引き継いでいることを3年後に知った子が、その時点で伯父からの相続を放棄できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は9日、『債務の相続人になったと知ってから3か月以内であれば放棄できる』との初判断を示した。裁判官4人全員一致の判決」との記事が掲載されていました。

 

 この判決は裁判所HPで閲覧できるのですが、これによれば、同事件における事実関係は、単純化すれば次のようなものであったようです。

・銀行が、主債務者(会社)、及びその連帯保証人であるAらに対して、8000万円の支払いを求めて訴訟提起。平成24年6月7日、銀行の訴えを認容する判決が言い渡され、後に判決は確定。

・Aは平成24年6月30日に死亡。Aの相続人である配偶者や子らは相続を放棄。これにより、Bを含むAのきょうだいが相続人となったが、平成25年6月にはBを除くきょうだいは相続放棄の申述をして受理された。

・Bは、平成24年10月19日、Aの相続人となったことを知らず、相続放棄の申述をすることなく死亡。

・Bの相続人は、妻、及び子である被上告人らであり、被上告人は、平成24年10月19日頃、自分がBの相続人となったことを知った。

・平成27年6月、前記銀行は、上告人に対して、確定判決ある債権を譲渡。平成27年11月2日、上告人は、判決に基づく強制執行のため、判決裁判所より、判決に関して承継執行文の付与を受けた。

・被上告人は、平成27年11月11日、裁判所より、判決正本及び承継執行文の送達を受け、「BがAの相続人であり,被上告人がBからAの相続人としての地位を承継していた事実」を知った。

・被上告人は、平成28年2月5日に「Aからの相続」について相続放棄の申述をし、同月12日、申述は受理された。

 

 また、民法には、再転相続における相続放棄の問題に関し、次の条文があります。

第916条
 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 

 このような事実関係において、最高裁判所令和元年8月9日判決は、被上告人の相続放棄の申述は熟慮期間内になされたもので有効である、と認めました。

続く

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
名古屋市中区錦2丁目8番23号
キタムラビル401号
(地下鉄伏見駅1番出口・丸の内駅6番出口各徒歩約2分)
法律相談のお申し込みは