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コラム
108 相続を放棄できる3か月とは?(最高裁令和元年8月9日判決)(2)
2019年08月15日
先回からの続き
相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで、その相続に関して、最初から相続人ではなかったことになります(民法915条、938条、939条)。
では、この3か月は具体的にはどのように決せられるのでしょうか。
前提として、相続人は、相続によって重大な不利益を被る場合がある、ということについて述べたいと思います。
相続人は、相続によって、被相続人の資産(遺産)に関しては、法定相続分を取得する権利を得ると共に、被相続人の債務(相続債務)に関しては、法定相続分に応じた部分を分割承継することになります(民法899条参照)。
(共同相続の効力)
第899条
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
「債務の分割承継」とは、例えば、被相続人が1000万円の債務を負っている場合において、ある相続人の法定相続分が4分の1であるならば、相続を放棄しない限り、この相続人は当然に被相続人の債務について250万円の範囲で承継する、ということです。
これは債権者の利害に関する問題ですから、相続人間の遺産分割協議によってこの債務について各相続人の負担割合を決めたとしても、それのみで相続人の債務が免除されることはありません。すなわち、債権者が相続人の債務を免除しない限り、相続人は、債権者との関係では、分割承継した債務を免れることはできません。
したがって、債権者は、相続人間でどのような取り決めがなされようとも、債務者の相続人に対し、当然に、債務全額の内、法定相続分に相当する部分を履行するよう請求できます。
被相続人が巨額の債務を負っていたとすれば、相続人は極めて困難な事態に陥ることになりますから、相続放棄の申述を有効になし得る期間が具体的にはどのように決せられるのかは極めて重大な問題です。
この点に関しては、これまで様々な裁判例で考え方が示されていますが、最も重要と思われる最高裁判所昭和59年4月27日判決は、次のような判断を示しています。
「民法九一五条一項本文が相続人に対し単純承認若しくは限定承認又は放棄をするについて三か月の期間(以下「熱慮期間」という。)を許与しているのは、相続人が、相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた場合には、通常、右各事実を知つた時から三か月以内に、調査すること等によつて、相続すべき積極及び消極の財産(以下「相続財産」という。)の有無、その状況等を認識し又は認識することができ、したがつて単純承認若しくは限定承認又は放棄のいずれかを選択すべき前提条件が具備されるとの考えに基づいているのであるから、熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきものである」
つまり、相続放棄できる3か月の起算は、相続人が、相続開始の原因(つまり被相続人の死亡など)、及び、これによって自分が相続人になったことの2点を知った時からスタートする、ということになります。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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