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コラム
73 平成29年民法改正(2) 消滅時効が変わる⑤
2019年05月13日
先回からの続き
ところで、上記のとおり、消滅時効に関し、一定の事由が存在する場合、時効期間の起算がゼロへと戻ります。
このことを、かねて民法は、「時効の中断」と定めていました。
時効が中断する場合としては、①「請求」(端的に言えば、訴訟提起すること)、②「差押え、仮差押え又は仮処分」、③「承認」(債務者が債務の存在を承認すること)といったものが定められ(改正前民法147条)、その上で、①「請求」に関しては、訴訟提起したものの裁判所による判決に至らず、訴えが却下されたり、訴えが取り下げられた場合には時効中断の効力は生じない、などととされていました(改正前民法149条)。
また、裁判所外で、債権者が債務者に対して履行を求める「催告」に関しては、時効中断の効力までは生じないものの、さしあたり6か月間は時効の完成が猶予される、とされていました(改正前民法153条)。
このように、民法上、時効中断事由とされたものの中には、債務者による債務の「承認」のように、それのみで確定的に時効期間の起算をゼロに戻すものもあれば、その後の事情によって時効期間の起算がゼロに戻らないこともある「請求」(訴訟提起)といったものもあるなど、性格の異なるものが混在し、また、その他に、一定の期間、時効完成を遅らせる(猶予させる)「催告」(裁判外の請求)も存在しました。
このような状況において、改正によって、時効期間の起算を確定的にゼロへ戻す場合を「時効の更新」、時効完成を一定期間猶予するにとどまる場合を「時効の完成猶予」とそれぞれ改め、これを前提として従来のルールが再編成されました。
ただし、法的な概念(その呼称)は変更されたものの、実質的なルールに大きな変更はありません(大きな変更はありませんが、後記のとおり、変更された部分もあります)。
すなわち、債務者が債務を「承認」した場合は、時効期間の起算が確定的にゼロに戻りますから、これは「時効の更新」を生じさせる場合として整理されました(改正後民法152条)。
また、「請求」(訴訟提起)や、「請求」に準じるもの(支払督促申し立てや調停申し立て)は、さしあたり「時効の完成猶予」を生じさせる場合であるとされた上、手続を通じて権利が確定された場合、「時効の更新」の効果が生じる、とされました(改正後民法147条「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める」)。
そして、「催告」(裁判外の請求)は「時効の完成猶予」を生じる事由として整理されました(改正後民法150条1項「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」)。なお、再度の催告には、さらに時効完成を遅らせる効果はない、という点も従来と変わりません(改正後民法150条2項「再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない」)。
以上に対し、ルールが変更された部分としては、これまでは時効中断の効力を有すると定められていた仮差押えや仮処分は、改正により「時効の更新」の効力はなく、「時効の完成猶予」の効力のみ有するとされたこと(改正後民法149条)などを指摘できます。
続く
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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