コラム

20 弁護士費用は自己負担が原則ですが…(1)~交通事故の話5~

2014年04月27日

 貸したお金が約束どおりに返ってこない。売った商品の代金の支払いがない。完成したばかりの新築の自宅で早くも雨漏りする。

 貸金の問題、売掛金の問題、請負に絡む瑕疵修補の問題など、民事紛争にさまざまなパターンがあり、紛争に至ったことに対する関係者の寄与度もさまざまです。
 その中には、第三者の目から見ても、一方当事者に落ち度というべき点が見当たらないケースも当然あります。
 落ち度のない当事者からすれば、紛争を解決するためにやむなく弁護士を依頼したのに、これに要した弁護士費用までどうして自分が負担しなければならないのか、相手方が責任をとって負担するべきだ、と思われるのは当たり前のことではないでしょうか。

 

 ですが、この常識的と思われる結論は、現在の裁判実務では認められていません。
 例えば、AさんがBさんに1000万円を貸したものの、期限到来後もBさんから返済がない、そこでAさんが裁判を起こし、貸金の点について完全勝訴したとしても、裁判所は、Bさんに対し、Aさんが負担した弁護士費用を支払えとまでは言わないでしょう。
 この問題では、Bさんは、そこまでの法的義務を負わない、と考えられるためです。
 すなわち、Aさんが、Bさんに対して貸金の返還を請求できるのは、BさんがAさんとの間の契約上、借りたお金を返す義務を負うためですが、一般的に、Bさんは、契約上、紛争に至った場合にAさんが負担することとなる弁護士費用を負担する義務までは負っていません。
 そうしますと、Bさんに弁護士費用を負担させるためには、別の法的根拠(例えばBさんに不法行為責任が成立するなど)が必要ですが、一般的にそこまでは認められないのです。

 

  もっとも、これには例外があります。紛争解決に要した弁護士費用(その一部)を紛争の相手方に負担させることを裁判所が認めている場合があります。
 交通事故で被害を受けた方が、加害者に対して損害賠償を求めて裁判を起こす場合は、この例外にあたります。続く
 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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