コラム

21 弁護士費用は自己負担が原則ですが…(2)~交通事故の話6~

2014年05月18日

前回の続き)

 故意または過失によって他人の権利利益を侵害すると、これによる損害を賠償するべき法的責任を負うことになります(不法行為責任、民法第709条)。
 権利利益を侵害された側から見れば、不法行為責任を負う者に対して損害賠償請求できるということですね。人身事故、物損事故問わず、交通事故被害者の加害者に対する損害賠償請求は、この不法行為責任が根拠になります。

 そして、被害者が加害者に対して不法行為責任を根拠に損害賠償を求め、弁護士に依頼して裁判を起こした場合の弁護士費用の負担について、最高裁判所は次のように判断しています(最高裁判所昭和44年2月27日判決)。

 

 「わが国の現行法は弁護士強制主義を採ることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行なうかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近い」

 「したがつて、相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ない」

 「現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである」 

 

 このような最高裁判例もあり、被害者が加害者の不法行為責任を追及する裁判に要した弁護士費用については、一定額を加害者の負担とするという扱いが認められています。

 認められる弁護士費用はいったいいくらなのか?弁護士に対して支払った費用は全額損害と認められるのか?前記最高裁判例が述べる「諸般の事情を斟酌して相当と認められる額」とはいくらかが問題となるわけですが、交通事故被害者から加害者に対する損害賠償請求訴訟においては、判決による認容額の1割程度(ただし、認容額が高額となるほど割合は小さくなる傾向にあり、逆に認容額自体が低額である場合には割合が大きくなる例もある)の金額が弁護士費用として認められています。

 交通事故被害回復のための裁判は、他の類型の民事事件と比べ、裁判を起こしやすい環境が存在すると言えるでしょう。交通事故で被害に遭われた方は、紛争解決のための手段として裁判も視野に入れるべきと考えます。

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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