コラム

66 平成29年民法改正(1) 何が変わるのか②

2019年04月26日

先回からの続き

 

 民法のうち総則・債権に関する規定を改正する平成29年民法改正の特色は、大きく2点あるように思われます。

 まず、1つには、明治以来の長い時間の中で積み重ねられきた裁判実務によって確立していた法規範(ルール)を民法の条文に分かりやすく取り込んだ、ということです。

 そして、もう1つには、現代社会に存在する問題を念頭に、これまでには存在しなかった全く新しい法規範(ルール)を民法の条文に創設した、ということです。

 

 前者(裁判実務によって確立していたルールの明文化)については、これまでにも法律の実務上は存在したルールが民法に分かりやすく明文化されるだけのこと、とも言えますから、実務上、大きな影響は生じないのではないか、と考えられます。
 言うまでもなく、民法は、裁判官や弁護士など、法律の解釈・適用を日常的に行う者のみが利用するわけではありません。市民生活の基本法である民法は、広く一般市民がこれを目にし、時に行動の指針とし、あるいは紛争解決の指針とするべきものですから、存在するルールを法律に明文化することは望ましいことです。

 

 しかしながら、後者(これまで存在しなかった新しいルールの創設)については、実務に大きな影響が生じるのではないか、と考えられます。

 例えば、これまで民法上の債権の消滅時効期間は、権利行使可能な時から10年間とされていましたが、時効期間を短縮する方向で改正されました。また、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間については、これまで原則として3年間とされていましたが、「人の生命・身体の侵害」に関する賠償請求権については、時効期間を伸長する方向で改正されました。

 民事法定利率は年利5パーセントであり、これは債権者・債務者の双方にとって大きな意味を持っていましたが、利率を引き下げる方向で改正されました。

 保証債務について、例えば保証契約のうち一定範囲のものについては公証人による意思確認が要求されるなど、重要な改正がありました。

 また、これまでには存在しなかった「定型約款」に関する基本的な定めが創設されました。

 

 自身の理解を深めるためにも、平成29年民法改正のうち後者の部分を中心に、このコラムでもその時々に取り上げてみたい、と思います。

続く

弁護士 八木 俊行

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