コラム

52 結婚と離婚の法律問題(11) 貞操義務違反と賠償責任

2019年04月3日

先回からの続き

 貞操義務違反による損害賠償の問題について、何点か補足します。

 まず、一般的に、不貞行為の時点で、すでに夫婦の婚姻関係が破綻していたという事情が存在するならば、不貞行為の相手方である第三者は、特段の事情がない限り、配偶者の他方に対し、慰謝料支払義務といった法的責任は負わない、と考えられています。 

 すなわち、最高裁判所平成8年3月26日判決は、次のとおり述べています。

 「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である」

 「丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである」 

 したがって、前記事例において、甲から慰謝料請求を受けたA(不貞行為の相手方)は、例えば、Aが乙と不貞行為に及んだ時点で、すでに甲と乙が離婚を前提として別居していたなどの事情が存在するならば、Aは法的責任を負うものでないとして争う余地があると考えられます。この問題が争点化するケースはままあるように思われます。

 

  また、不貞行為の相手方Aは、甲から、不貞行為の他方当事者たる乙と共に責任を問われる場合もあれば、責任を問われる時点では乙が甲との関係を修復しているなどの事情からA単独で責任を問われる場合もあるでしょう。

 Aは法的責任を免れないとしても、甲の損害全てをA単独で負わなければならないのでしょうか。

 このような場合、甲の損害(精神的苦痛)は、Aと乙の2人の行為(共同不法行為)によるものですから、Aは、甲の請求に応じて賠償金を支払ったならば、乙に対し、甲が支払った金額のうち一定割合を負担するよう要求することができる、と考えられます(連帯債務者間の求償の問題)。

 続く

名古屋/伏見通法律事務所 

弁護士 八木 俊行