コラム

1 遺言(遺書)を作成するということ~遺言・相続・遺産分割の話1~

2013年09月13日

ある人が亡くなると、法律的にはその時点で相続が開始します。
 法定相続人が財産を承継するわけですね。
 民法では、この亡くなった人のことを「被相続人」といいますが、その人に身寄りがなく、法定相続人が誰もいない、という場合はどうなるのでしょうか。
 この場合、家庭裁判所によって相続財産の管理人が選任され、管理人が相続財産を清算することになります。つまり、被相続人に借金などのマイナスがあれば、プラスの財産で支払いをする、ということですね。
 それでも財産が残るのであれば、被相続人と特別な縁故があった人に対して財産が与えられることがあります。これは家庭裁判所の判断によります。
 さらに、それでも財産が残るのであれば、最終的には国に帰属することになります。
 このように、民法は、相続が開始した場合の被相続人の財産の帰趨について定めています。

 

 では、人は、自分の意思で、自分が死んだ場合の財産の処分方法を決定することはできないのでしょうか。
 もちろん、答えは「できます」ということになります。
 生前に遺言を作成しておくというのは、そのための方法の一つです。

※作成者の死後に遺されることとなる人たちに宛てた文書を一般的に「遺書」と呼びますが、民法では、そのうち財産処分を目的とした一定要件を備えたものを「遺言=いごん」と規定しています。

 その他にも、例えば、生前に、ご自分の財産に関して、例えば誰かに贈与するというように何らかの契約を締結しておく、ということも考えられます。この贈与契約に、贈与者が死亡した場合に効力が発生するものとする、と条件を定めておけば、遺言の作成と同じ目的を達成できます。法的には、このような贈与契約のことを「死因贈与」と言います。

 

 遺言と死因贈与の違いとして、前者は被相続人が単独で行うことができるのに対して、後者は契約であるため、被相続人と受贈者の合意が必要となる、という点が挙げられます。
 遺言を作成する場合、どのように財産を処分するのか周りの人に秘密にしておくこともできるわけですね。
 遺言者の存命中は遺言の内容は明らかにされず、法定相続人は、被相続人が亡くなった後、初めて遺言の内容を知る、ということも多いのではないでしょうか。
 法定相続人は、当然、財産の取得を期待しているわけですが、遺言が存在するために期待通りにことが進まなくなるということもあるわけです。この時のショックの大きさが、その後の紛争の火種になることも少なくないように思われるのですが、さりとて、被相続人の生前に遺言の内容を法定相続人に明らかにすれば、事情によっては、その時点で紛争となってしまうということもあるでしょう。
 遺言の内容をいつ明らかにするのが適切であるのかは難しい問題であると思います。

 

 遺言は、自筆証書遺言であれ、公正証書遺言であれ、遺言者が亡くなったときに効力を生じます。
 この段階で遺言の記載内容が不明確であったとしても、遺言者が補足して真意を説明する、というわけにはいきません。遺言の内容が不明確であれば、それが紛争の火種となります。
 遺言を作成される場合には、お考えのところを明確に記載することが必要不可欠です。