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コラム
77 2019年5月民事執行法改正① 民事執行法とは何か、何が変わるのか
2019年06月2日
2019年5月10日、参議院本会議で、「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」が可決され、成立しました。
改正法の施行時期は、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています(改正法附則1条)。改正法は2019年5月17日に公布されましたので、今後、2020年5月17日までの間の「政令で定める日」に施行されることになります。
要するに、民事執行法が改正されたということですが、そもそも「民事執行法」とは何でしょうか。
例えば、AがBに対して100万円を貸し付けたところ、返済期限が到来したので、Aから返還を求めたものの、Bがこれを無視するため、Aは裁判所に訴訟提起し、裁判所において、Bに対し、Aに100万円を支払うことを命じる判決が下された、としましょう。
Bは、判決で自らの債務が確定した以上は、支払いに応じるかも知れません。Bが社会的に責任ある立場にいるならば、判決が確定した段階で支払いに応じる、ということが多いでしょう。
では、判決にも関わらず、諸事情からBがこれを支払わない場合にはどうなるでしょうか。例えば、訴訟手続に関与した裁判所が自ら下した判決を実現するべく、Bから金銭を回収するべくAに助力してくれるでしょうか。
そんなことはありません。債権回収は自己責任です。Aは、Bが判決を無視して支払いに応じないというならば、自らの責任でBの財産状況を調査し、めぼしい財産を現金化してそこから回収しなければなりません。
「民事執行法」は、端的に言えば、判決などで公的に認められた権利を実現するための手続(強制執行手続)のあり方について定めた法律である、と言うことができるでしょう。
ちなみに、判決(確定判決)など、強制執行を行う根拠となる文書を、あまり耳慣れない言葉ですが、「債務名義」と言います。訴訟手続を通じて取得された判決以外にも、訴訟手続上で作成された和解調書や、調停手続上で作成された調停調書も債務名義となり得ますし、裁判所外の公証人役場で作成された公正証書も一定要件を満たすものは債務名義となり得ます。詳細は民事執行法22条に明記されています。
改正法の条文は法務省HPでも確認できます。一読したところ、2019年5月の民事執行法改正の要点は、次のようにまとめることができるでしょう。
1 強制執行手続のうち、不動産競売手続から暴力団関係者を排除するための制度が新たに導入された。
2 子の引き渡しを実現するための強制執行方法として、新たに直接強制の方法が導入された。
3 金銭債権に基づく強制執行のため、裁判所を通じて、債務者名義の不動産、債務者の勤務先情報、そして、債務者名義の預貯金に関する情報を取得できるという制度が導入された。
改正の経緯や内容を解説する書籍はまだ手元にありませんが、備忘のため、その概要をまとめてみたいと思います。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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