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コラム
81 「パワーハラスメント」の定義付け
2019年06月7日
1週間前のことですが、2019年5月30日付毎日新聞朝刊に「パワハラ防止義務化 改正法成立」、「罰則なし 線引き難しく」とのタイトルのもと、「職場のパワーハラスメントの防止を企業に義務づける改正労働施策総合推進法が29日、参院本会議で可決、成立した。初めてパワハラを定義し、上下関係を背景としたパワハラは許されないと明記する一方、罰則規定は見送られた。実効性が確保できるかが課題になる。義務化の時期は、早ければ大企業が2020年4月、中小企業が22年4月の見通しだ。」との記事が掲載されていました。
記事によると、改正法は、パワーハラスメントとは、「優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で労働者の就業環境を害する」ことである、と定義付けたと言うことです。
たしかに、「パワーハラスメント」(パワハラ)という言葉は、社会的に定着しており、その言葉が持つ意味合いも広く共有されているように思われるものの、これまでは法律によって定義が明確に定まっていたわけではありませんでしたので、この点を明らかにした法改正には意義があると思われます。
ただ、改正法は、パワーハラスメントの定義を明確化すると共に、企業に対してその防止を義務付けたということですが、企業(使用者)の立場から考えると、これまでであっても、企業は、労働者との間の労働契約締結に伴い、「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労働契約法5条)というように「職場環境配慮義務」を負うものとされ、企業が従業員によるパワーハラスメント行為を放置することは、その企業の法的責任を生じさせる、と考えられてきたことからすれば、この点に関する法律上の扱いが、改正法の成立・施行によって大きく変わるというものではないのではないか、と考えられます。
すなわち、改正法の施行は、前記記事によれば、「早ければ大企業が2020年4月、中小企業が22年4月の見通し」ということですが、たとえ改正法施行前であっても、企業が、従業員によるパワーハラスメント行為を放置することは許されるものではありませんし、事情によっては企業自身の法的責任の問題ともなり得ますので、留意される必要があります。
弁護士 八木 俊行
伏見通法律事務所
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