コラム

80 2019年5月民事執行法改正③ 裁判所を介した債務者名義の財産を調査する手段の導入

2019年06月6日

先回からの続き

 2019年5月10日に成立した改正民事執行法の要点の3点目は、金銭債権に基づく強制執行のため、裁判所を通じて、債務者名義の不動産、債務者の勤務先情報、そして、債務者名義の預貯金に関する情報を取得できるという制度が導入された、という点です。

 

 金銭債権に基づく強制執行とは、債務者の意思に関わらずその財産から相当額の金銭の支払いを受けるということにほかなりません。

 これを実現するためには、債務者の財産の所在を把握することが必要不可欠です。債務者の財産の所在が不明の段階で、債権者が強制執行を求め、裁判所にその旨を申し立てても、不適法として門前払いされます。

 債権者は、自らの責任で、限られた調査手段を用いて調査することを求められますので、財産関係が不明のため、強制執行を断念せざるを得ない、ということも多々あるというのが現実です。

 このような取扱いの弊害はかねて指摘されており、平成15年に民事執行法が改正された際には、新たに「財産開示手続」が創設されたものの、実効性に乏しくほぼ利用されていない、と言われていました。

 

 今般の民事執行法改正により、新たに「第三者からの情報取得手続」との制度が創設され、債権者は、裁判所を通じ、債務者の財産状況を一定範囲で調査できるようになりました。

 すなわち、まず、執行力ある債務名義を有する債権者は、一定要件を満たす場合、裁判所に、法務局に対して、債務者名義の不動産(土地・建物)に関する情報提供を命じるよう、求め得ることになりました(改正民事執行法205条)。

 また、執行力ある債務名義を有する債権者であって、その債権が夫婦間の婚姻費用分担請求権、子の養育費支払請求権、親族間の扶養請求権、あるいは生命・身体を侵害されたことによる損害賠償請求権である場合、裁判所に対し、市町村、あるいは日本年金機構などに対して、債務者の勤務先に関する情報提供を命じるよう、求め得ることになりました(改正民事執行法206条)。

 また、執行力ある債務名義を有する債権者は、裁判所に対し、金融機関に対し、債務者名義の預貯金口座に関する情報提供を命じるよう、求め得ることになりました(改正民事執行法207条)。

 

 改正法には「最高裁判所規則で定める」との文言が複数回用いられています。

 したがって、新制度の詳細は裁判所規則によるところが大きいと考えられることから、まずはどのような規則が制定されるのかが注目されます。

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
名古屋市中区錦2丁目8番23号
キタムラビル401号
(地下鉄伏見駅1番出口・丸の内駅6番出口各徒歩約2分)
法律相談のお申し込みは