コラム

25 「さらば財務省!」(1)~読書2~

2014年06月5日

 高橋洋一著「さらば財務省!」(講談社、平成20年3月18日第一刷発刊)を読みました。
 高橋洋一
氏は財務省の元官僚であり、いわゆる小泉構造改革において、裏方として「郵政民営化」、「道路公団民営化」、「政策金融機関一本化」、「公務員制度改革」などに関与されたそうです。

 もともと数学者を目指していたという高橋氏が財務省(旧大蔵省)に入省し、あるきっかけから小泉構造改革に関わるようになり、官庁側からさまざまな反発を受けるもいくつかの改革案を実現させ、小泉氏退任後は戻る場所がなくなり、結局、退官するに至った、という経緯は、波瀾万丈で実に興味深いもので、初めて知ることもいろいろとあり、読んでよかったと感じる内容でした。文章もとても読みやすいものでした。

 この書籍に私の目を引く部分がありました。

 

 かねてわが国の法曹養成制度は「改革」が進められており、その一環として、この数年、司法試験合格者は増大し続けてきました。かつては年間500人程度であった司法試験合格者数が、段階的に人数が増え、現在では年間2000人程度となっています。
  しかしながら、裁判官、検察官の定員がごく限られていることから合格者の大半は民間事業者である弁護士となるわけですが、新人弁護士の就職先が足りない、という状況がもう何年も続いています。また、統計上の裁判件数も減少傾向が続いています。
 そこで、かなり以前から、これ以上、弁護士を増やすべきではない、改革に間違いがあったならば是正するべきではないか、という意見がありました。

 私は司法試験合格者数増大の方向に向かった経緯の詳細は存じませんが、一説には、弁護士に対する需要がある、弁護士が不足している、という意見があったことによるのだとか。

 ならば、弁護士に対する需要がない(新人が就職できないとはそういうことなのでしょう)ことが明らかとなった以上、司法試験合格者数を減らせばいいのではないか(司法試験合格後の司法修習にもいろいろと公的な負担があるわけですし)、と考えることは、合理性があると思われるところです。

 この問題に関しては、政府内に設置された審議会で、法曹養成制度改革の見直しについての議論が続いています。
 インターネット上の情報によると、平成23年5月以降は法曹の養成に関するフォーラム」(法務省)、平成24年8月以降は法曹養成制度検討会議」(内閣)、平成25年9月以降は法曹養成制度改革顧問会議」(内閣官房)がそれぞれ設置され、有識者と呼ばれるメンバーの方々による議論がなされているようです。

 しかしながら、事態が改善されたという話は聞きません。相変わらず、新人弁護士の就職先はかなり足りない状況が続いているようです。

 そのような経緯もあり、かねて、私は、「審議会」という制度は何を目的とするものなのか、メンバーの人選は誰がどのような基準で行うのか、そこに問題はないのか、など疑問を感じていました。

続く 

弁護士 八木 俊行

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