コラム

54 裁判官の交代

2019年04月5日

 裁判所で取り扱われる事件には、訴訟事件、調停事件、審判事件、破産事件など、さまざまな類型がありますが、それぞれに担当裁判官がおられます。担当裁判官が、事件を審理し、いずれかの段階で判断(一定の結論)を示すことで事件の解決が図られていく点は、いずれの事件類型にも共通のことです。

 

 ある事件が裁判所に係属してから裁判官が判断を示すまでには、一定の期間を要します。
 事件類型や内容によって長短さまざまですが、訴訟手続となれば、第一審で1年を超える、という事態は決して珍しいことではありません(かつては、第一審の平均審理期間は8か月程度でした。平成31年現在の状況については、拠るべき資料が見当たりませんでしたので割愛します)。そして、この審理期間に担当裁判官が交代する、ということがあります。

 最も多いのは、人事異動によるものでしょう。裁判所では、毎年、4月上旬のこの時期に人事異動があるようです。正確なところは把握しませんが、概ね3年程度で異動される方が多いように感じます。また、この人事異動のため、4月上旬のこの時期には裁判所の審理は行われず、訴訟事件などの期日も指定されない扱いとなる例もあるようです。

 

 事件の審理はどうなるのでしょうか。

 それまで各当事者が提出した主張書面(準備書面)や証拠は、事件記録として新たな裁判官へそのまま引き継がれるわけですから、建前上は、担当裁判官交代は事件処理の帰趨に影響しない、ということなのでしょう。

 しかしながら、それまでの担当裁判官は、一定期間をかけて期日等を通じて双方当事者(代理人)と対話を重ねるなどされてきたわけですが、その体験が新たな担当裁判官へと全て引き継がれることはないでしょう。その結果、事件に対する見方、考え方が違ったものになる、ということはあるのではないでしょうか。
 また、言うまでもなく裁判官も1人の人間ですから、それぞれに色々な考え方をお持ちのはずで、このことが事件処理に影響することもあるのではないでしょうか。
 加えて、穿った見方かもしれませんが、裁判官交代に伴い、まとまった数の係属事件が引き継がれると考えられますから、あるいは諸事情により事件記録の読み込みが十分にできない、ということもあるかもしれません。

 ですから、裁判官交代は事件処理の帰趨に影響しないのか、と言えば、私は影響すると思います。
 むしろ、裁判官交代が一つの分岐点となり、潮目が変わるということは、ままあることなのではないか、と思います。

 

 そのため、自身が関係する事件の担当裁判官が交代するのか否かは気になるところです。
 便利なもので、インターネットで「裁判官 人事異動」と入力して検索すれば、人事異動の詳細情報が閲覧できます。私が関与させていただいている事件にも、担当裁判官が交代されるものがあるようです。

 先日、SNSへの投稿と懲戒処分で話題になった岡口基一判事のお名前もありました。東京高等裁判所から仙台高等裁判所へ異動されるようです。

 人事情報の中に、これまで私が司法修習生の頃にお世話になった方、担当事件でお世話になった方などのお名前も拝見し、懐かしいような、身の引き締まるような気持ちにもなりました。

 

 新しい地で、新しい人たちと共に仕事をするということ自体、大変なことだと思いますし、まして一定程度審理が進行した事件を、同時にまとまった件数を引き継ぐというのは本当に大変なことなのだろう、と容易に想像できます。
 ただ、人事異動も転勤もない身としては、少々うらやましいような気もしました。

弁護士 八木 俊行

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