コラム

49 選択的夫婦別姓

2019年03月26日

 私は、昨年末まで公益社団法人名古屋青年会議所(名古屋JC。JCは「Junior  Chamber」=青年会議所の略称です)に所属していました。
 名古屋青年会議所では、原則として毎月1回、一般市民を対象にしたフォーラム(JCでは「例会」と称します)を開催しているのですが、昨年、ある例会に講師としてお越しになられたサイボウズ株式会社社長の青野慶久氏の講演をうかがう機会がありました。その例会は「育児支援」をテーマとするもので、青野氏は、サイボウズで実践されている従業員の新しい働き方などについてお話しをされていました。
 (記憶も薄れつつありますが)創業当時は従業員の離職率が高かったものの、一人ひとりの従業員のニーズに合わせた人事制度を採用したところ離職率が下がった、同社では時短勤務やテレワークなど従業員の多様な働き方を推進する取り組みを積極的に取り入れている、といったお話しで、育児の重要性を強調しておられたことが印象に残っています。

 

 今朝の毎日新聞1面に「夫婦別姓を選択できる法制度がないのは憲法に違反するとして、東証一部上場のソフトウェア開発会社『サイボウズ』の青野慶久社長(47)ら男女4人が国に賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は25日、請求を棄却した」との記事が掲載されていました。

 原告側は、夫婦同姓を定める民法第750条が憲法に違反すると主張するのではなく、民法第750条が存在するとしても、戸籍法に、婚姻後も旧姓を使うことができる旨の定めがあれば問題は解決するのに、そのような立法がなされていないことが憲法に違反すると主張したところ、判決は、民法上の姓と戸籍法上の姓は密接不可分であり、現行法の下では姓が二つに分かれることは予定されていないとして原告側の主張を認めなかった、ということです。

 夫婦同姓を定める民法第750条の合憲性は、平成27年12月の最高裁判決によって肯定されていた、という経緯もありますので(▷「43 結婚と離婚の法律問題(5))、昨日の東京地裁の判決はある程度予想されたところであったのかも知れません。

 

 記事には、内閣府の世論調査の結果も示されていました。
 選択的夫婦別姓制度のための法改正について、「法改正は必要ない」と考えるか、「法改正してもかまわない」と考えるか、といった事項を問う世論調査の結果は、1996年の調査では「法改正は必要ない」が「法改正してもかまわない」を上回っていたのに対し、2001年以降、直近までの調査では、一貫して「法改正してもかまわない」が「法改正は必要ない」を上回っている、というのです。

 国会による法改正や裁判所による法解釈の変更には、国民の意識を含めた社会の変化が不可欠の前提となるのだろうと考えられますが、この問題について、すでに前提はクリアされている、ということなのかも知れません。

 記事によると、青野氏は最高裁まで争う意向とのことですから、いずれこの問題は最高裁判所で再び取り上げられることになるのでしょう。知名度があり、社会的影響力のある人物が積極的に関与されることで、この問題に対する社会の関心が高まり、あるいは裁判所の判断に影響を及ぼすのかも知れません。

 

弁護士 八木 俊行

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