コラム

31 逸失利益の算定方法が変わる?~交通事故の話10~

2014年07月9日

 交通事故被害者に不幸にして後遺障害が残存したとすれば、これにより将来にわたって労働能力の一部(あるいは全部)失われ、得られるはずであった利益を得られなくなったと考えられることから、逸失利益(後遺障害逸失利益)を損害として金銭評価し、加害者に賠償請求することができます(詳細はこちら)。

 

 一般に、後遺障害逸失利益の金額は次のように算定されます。 

 「被害者の基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(年数)に対応するライプニッツ係数」

 

 労働能力喪失率は、後遺障害の程度に応じて判断されるものですが、実務上は、自賠責保険会社が認定する後遺障害等級ごとに喪失率が定められているため、これに依拠して判断されています。

 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とは何でしょうか?
 まず、労働能力喪失期間とは、原則として、後遺障害と評価される症状が固定した時から67歳まで(労働能力喪失期間の終期は原則として67歳と考えられています)の年数をいいます。
 ライプニッツ係数とは何でしょうか。
 後遺障害逸失利益は、被害者の将来にわたる収入減少を、現在の損害として一括して金銭評価し、加害者に、被害者に対して賠償させるものです。金銭には利息が付きものであり、現時点で支払うべき金銭の支払いを将来に先送りすれば、元本に加えて利息(あるいは遅延損害金)を支払わなければならないことからしますと、これとは逆に、将来支払うべき金銭を、現時点で一括で先払いするとすれば、利息分(中間利息)を差し引くべき、と考えられます。このように、中間利息控除のために用いられるのがライプニッツ係数です。

 現在の実務では、ライプニッツ係数は年利5パーセントで計算された数字が用いられています。年利5パーセントとは民事法定利率であり、中間利息控除の問題は利息の問題の裏返しであることから、民事法定利率で計算することとされているのです。
 しかしながら、この超低金利の時代に年利5パーセントというのはあまりにも実社会と乖離しており(市中に、誰もが年利5パーセントで運用できる投資先があるでしょうか?)、適切ではないのではないか、という疑問はかねて言われていました。
 もっとも、最高裁判例がこの結論を認めていたことから上記のとおりの運用となっていたわけです。

 

 今朝の新聞報道によると、法務省の法制審議会(民法部会)は、この後遺障害逸失利益の中間利息控除の問題について、現状では年利5パーセントで計算しているところを年利3パーセントに引き下げる案を相当と判断したとのことです。
 年利3パーセントでもまだ利率が高すぎるのではないか、という意見もありうると思いますが、このような法改正により被害者に有利となることは間違いありません(ただ、保険契約者の保険料負担も増大することでしょう)。

 もっとも、この問題は以上にとどまらないように思われます。中間利息控除の問題が利息の問題と表裏の関係にあると考えられる以上、加害者が被害者に対して負担するべき損害賠償債務の遅延損害金についても年利3パーセントで計算することにする、という方向に議論が進むのではないでしょうか(現状では、加害者の被害者に対する損害賠償義務は交通事故日から履行遅滞に陥るとされ、同日から損害賠償債務の元本に年5パーセントの割合による遅延損害金が生じるものとされています)。

 まずは後遺障害逸失利益の計算方法について被害者側に有利な法改正がなされるのかもしれませんが、いずれは加害者側に有利な法改正がなされ、全体としてのバランスが保たれる、そういうことになるのではないでしょうか。