コラム

24 交通事故加害者になってしまったら(3)~交通事故の話9~

2014年06月1日

前回の続き)

 交通事故を起こし、加害者となってしまった。被害者に対して適正な金額を賠償する意思はあるが、被害者からは過大としか考えられない金額を請求されている。あるいは、被害者から昼夜問わず電話がかかってくるなど執拗な請求が続いている。こちらからは裁判を起こすよう求めているが、そのつもりはない、と言う…。

 このような状況に至った場合、加害者はどのように対処するべきでしょうか?

 一つの選択肢としては、加害者から被害者を相手方として裁判を起こす、ということが考えられます。

 加害者が被害者を訴えるなどということがあるのか、とお考えになるかもしれませんが、そのような裁判は現実に存在します。

 加害者は何を求めて裁判を起こすのでしょうか。

 加害者は、裁判所に、被害者に対する損害賠償義務の範囲を判断してもらうことを求めて裁判を起こすのです
 例えば、加害者が相当と考える賠償金額は300万円であるが、被害者からは3000万円の賠償を求められているとしましょう。この場合、加害者から、「交通事故に基づく被害者に対する損害賠償義務は300万円を超えて存在しないことを確認する」、という訴えを起こすことが考えられます。これを「債務不存在確認の訴え」といいます。

 ただし、当事者同士の話し合いによる解決の余地があるのに十分な話し合いが尽くされていない、とすれば、裁判所の判断によって訴えは棄却されることでしょう(当事者間で話し合いができるのであれば、裁判所が判断する必要性がなく、「訴えの利益」がない)。
  例えば、被害者から特段執拗な賠償請求があるわけでもないのに、事故から数日後に加害者から債務不存在確認の訴えを起こすとすれば、請求棄却となる可能性が高いと考えられます。

 したがいまして、加害者にとって、「債務不存在確認の訴え」は最後の手段という位置付けになります。ただし、選択肢としては常に念頭に置いておくべきでしょう。

 また、加害者には、このような訴えを起こす前に、簡易裁判所に民事調停を申し立て、調停委員を介して被害者と話し合う、という選択肢もあります。
  ただし、話し合いによる解決の余地がないと考えられる場合には、調停での解決の見込みもないでしょうから、やはり債務不存在確認の訴えが適切である、ということになるでしょう。