民事事件の解決過程と弁護士の関与

民事事件は、発生から解決までにどのような過程を経るのでしょうか。また、弁護士はどの段階で関与するのでしょうか。

 

民事事件とは

一般的に、紛争は、2人以上の当事者間で生じます。そして、土地建物や株式などの財産権の帰属に関する紛争、注文者が請負人に対して約束どおりの仕事の完成を求めるなど契約に基づく履行請求に関する紛争や、不法行為に基づく損害賠償請求に関する紛争は、いずれも私人間の権利義務に関する紛争であり、このような類型の紛争を「民事事件」と言います。

夫婦間の離婚に関する問題や、養親・養子間の縁組解消に関する問題、あるいは相続人間の遺産相続に関する問題は「家事事件」と言いますが、これも「民事事件」の一類型です。

 

民事事件は当事者間の合意で解決できる

民事事件は、私人間の権利義務に関する争いですから、解決内容が公序良俗に反するなどの例外的場合を除き、当事者間の話し合い(交渉)により合意が成立すれば、どのような内容の解決でも許容されます。

例えば、交通事故が発生し、被害者が加害者に対して損害賠償の支払いを求めている、という場合、被害者と加害者が合意すれば、加害者が負担するべき賠償金額がいくらであっても許容されます。0円であってもかまいませんし、1億円であってもかまいません。 

また、そのような合意は、裁判所の手続でなされることが求められるわけでもありません。裁判所外の話し合い(交渉)によって合意が形成できれば足ります。

したがって、民事事件では、まずは当事者間の話し合い(交渉)によって紛争を解決できないかが検討されることになります。

 

訴訟手続とは

当事者間の話し合い(交渉)で紛争を解決できない場合、それが法律の適用によって解決できる問題である以上、裁判所の判決で解決基準を確定して紛争を解決するべく、訴訟手続を選択することになります。

法律は、事実に適用されるものであり、事実は、当事者間に争いがないか、あるいは裏付けとなる証拠が存在する場合に認められます。そのため、訴訟手続を選択するに先立ち、関係法令の状況、先例となる裁判例の状況、各証拠などから認められるであろう事実関係はどのようなものか、といった点を十分に検討する必要があります。

裁判所における訴訟手続が開始した後であっても、当事者が合意すれば、その内容で紛争は解決されます。

 

調停手続とは

民事事件に関し、裁判所の手続としては調停手続もあります。

調停手続とは、当事者が、裁判所で、民事調停官及び調停委員から構成される調停委員会を介した対話により、紛争解決のための意を形成する手続と言えるでしょう。

当事者が調停委員会が示した解決案(調停条項)を受け入れれば、これに従い紛争は解決されますが、当事者が調停条項を受け入れないなら、解決されることはありません。調停手続は、裁判所外の当事者間の話し合い(交渉)の延長線上にあるものと言えます。

 

訴訟手続まで本人対応も可能 ただ、交渉段階から弁護士対応することもある

以上から、民事事件の解決は、まずは「当事者間の話し合い(交渉)」(①)がなされ、これで解決できない場合、「裁判所における訴訟手続」(③)に移行する、という過程が基本であり、事案の性質などの事情に応じ、「裁判所における調停手続」(②)が選択されることがある、ということになります。

順序としては、①→②→③、あるいは①→③となるでしょう。

民事事件の発生から解決までの過程につき、最初から最後まで当事者自身が対応することも可能です。我が国の民事訴訟法は、本人が訴訟手続を追行することを認めています(本人訴訟)。

また、紛争解決に向けて代理人として弁護士を選任するならば、上記過程のいずれの段階でも選任できます。すなわち、裁判所の手続に至る前の話し合い(交渉)の段階で、代理人として弁護士を選任できます。

事案の性質上、当事者間で直接のやり取りをすることが不適切である、相手方が過大な要求をしており受け入れる余地が乏しいなど、当事者間の直接交渉を継続することが適当ではない事情が存在する場合、①「交渉」の段階から、代理人として弁護士が選任されることも多々あります。

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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