成年後見(個人向け業務・成年後見)

民法上、人は権利義務の主体であり、自らの意思で契約を締結したり、自らに帰属する財産を管理・処分する、というのが大原則です。

もっとも、このような原則は、人が十分な判断能力を有していることを前提としますから、何らかの事情から判断能力が十分ではない人については別の考慮を要し、その人を保護するため、第三者を代理人として代わりに契約を締結させる、代わりに財産を管理・処分させる、といった対応が必要でしょう。

 

例えば、未成年者は、自ら有効に契約を締結することはできません。親権者(親)が、未成年者の代理人として契約を締結することとされており、未成年者が単独で締結した契約は、後から取り消せるとされています。

一般的に、未成年者は、判断能力が十分ではないため、これを保護するため、例外的扱いが定められているわけです。

保護するべき必要性があるのは、未成年者に限りません。成人(成年者)であっても保護を必要とする場合はあります。加齢による判断能力の低下は、そのような場合の一つと言えるでしょう。

このような場合のため、民法が用意する制度の一つが成年後見です。

 

成年後見の概要(開始)

成年後見は、判断能力が十分ではない成年(本人・成年被後見人)の利益を守るためため、家庭裁判所の関与の下、選任された成年後見人に代理権などを付与し、財産管理や身上監護の任務(後見事務)を担わせる制度である、と言えるでしょう。

 

成年後見は、家庭裁判所の判断(審判)によって開始します。

ある本人に関し、家庭裁判所が、成年後見を開始する、という審判をするのは、外部からその旨の申し立てがなされた場合に限られます。「成年後見開始の審判を求めるという申し立て」ができるのは、本人やその配偶者、4親等内の親族といった一定範囲の人々に限られます。

本人が常にそのような申し立てができるとは限りませんし、本人の周囲に常にこのような親族がいるとも限りませんので、公益的立場から、検察官も、成年後見開始審判を申し立てることが認められています。

 

そして、成年後見を開始できるのは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(民法7条)に限られます。

したがって、申し立てを受理した家庭裁判所は、本人がそのような状況にあるのか、事実関係を確認することになります。そのため、申し立てに際しては、この点を裏付けるべく医師の診断書の添付を求められますし、場合によっては、家庭裁判所の調査が行われます。

 

成年後見の概要(後見人の業務)

家庭裁判所に選任された成年後見人は、本人(成年被後見人)の代理人として、本人の財産の管理や身上監護といった後見事務を行うことになります。

後見事務は、家庭裁判所の監督下にあり、実務上、成年後見人は、家庭裁判所に対し、定期的に後見事務の状況を報告せねばならない、とされています。また、家庭裁判所は、成年後見人を監督させるため、成年後見人とは別に成年後見監督人を選任することもあります。

 

成年後見の概要(後見人の任務の終了)

後見人の任務は、後見人が家庭裁判所の許可を得て辞任する場合(正当な事由を要します)、家庭裁判所に解任される場合(不正な行為など、任務に適しない事由があるときに限られます)、あるいは、本人が判断能力を回復したなどの事情から後見開始の審判が取り消された場合、そして、本人が死亡した場合に終了します。

前二者は、その時点における後見人の任務が終了するのみで、家庭裁判所は新たな後見人を選任することになります。

したがって、いったん成年後見が開始すると、相当長期間にわたり存続することになる、と言えるでしょう。

 

事実関係の把握と解決見通しの検討

成年後見に関しては、ご自身、あるいはご親族など身近な人の成年後見開始に関することや、あるいはすでに選任済みの成年後見人とご本人の間の関係など、さまざまな局面で、法律問題として解決する必要が生じるものと考えられます。

これを法律問題として解決することを目指すならば、裏付けとなる資料を踏まえ、事実関係を把握し、法律を適用するとどのような結論を導き得るかを検討する必要があります。

まずは、ご相談下さい。トラブル・紛争の早期解決に向け、共に一歩を踏み出しましょう。

 

(参考)
民事事件はどのような過程を経て、解決されるのでしょうか。弁護士はその過程にどのように関わるのでしょうか。 

民事事件の解決過程と弁護士の関与

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
名古屋市中区錦2丁目8番23号
キタムラビル401号
(地下鉄伏見駅1番出口・丸の内駅6番出口各徒歩約2分)
法律相談のお申し込みは