金銭の貸し借りと返還請求(個人の皆様へ)

金融機関による融資のように反復して行われるものだけでなく、親戚や友人などの人間関係からお金の貸し借り(金銭消費貸借)が行われる場合があります。 

貸し主は、人間関係によっては、当初から返済をあてにしていない場合もあるでしょうが、返済を期待して貸し付ける場合も多いでしょう。

他方、借り主は、「のどもと過ぎれば熱さを忘れる」のことわざにあるように、危機的状況を脱すれば、できるならば返済を免れたい、あるいは先延ばしにしたい、と考えるのが人情でしょう。

双方の言い分が対立し、解決の目途が立たないような場合、貸し主としては、訴訟手続などの法的手続を検討する必要があります。

他方、借り主は、どのようなことを反論できるでしょうか。

 

金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求

貸し主が、借り主に対し、貸したお金の返済を求めるという行為は、法律的には、貸し主は、「消費貸借契約(金銭消費貸借契約)に基づく貸金返還請求権」を行使している、ということになります。

このような法律的な権利を行使するためには、一般的に、次の2点の事実が必要となります。

①貸し主から借り主に対する金銭の交付 
②貸し主と借り主の間の返還の合意

当事者間に、①②に該当する事実に争いがあるならば、資料(証拠)でもって明らかにする必要があります。①については領収書、あるいは口座送金により金銭が交付されたならば預金通帳などで明らかにすることになるでしょうし、②については契約書、あるいは借用書などで明らかにすることになるでしょう。

各事実を直接的に裏付ける資料が見当たらない、という場合には、さらに事実経過を詳細に検討する作業を要するでしょう。

 

借り主の言い分

他方、借り主は、何か反論できることはあるでしょうか。

例えば、すでに借りたお金を全額返済している、というなら、それはもちろん有効な反論となります。

一般的に、返済を受けた貸し主自身がさらに返済を求めることはないと考えられます。貸し主が死亡して相続が発生し、相続人が遺品中に借用書を発見し、これをきっかけとして借り主に返済を請求する、ということはあり得るかもしれません。このような場合、すでに返済した事実は、当然、反論できることです。ただ、当事者間に争いがあるならば、返済の事実を資料でもって明らかにする必要が生じるでしょう。

また、いったん発生した請求権(債権)は、時間の経過によって消滅する場合があります。いつから、どれくらいの時間が経過すれば、請求権は消滅するのか。それは法律の解釈適用で決せられることになります。

ある程度、長期間が経過後、突如として貸し金の返還を求められたような場合、消滅時効の可能性も検討する必要があるでしょう。

 

事実関係の把握と解決見通しの検討

トラブル・紛争は各段階で生じ得ますが、これを法律問題として解決することを目指すのであれば、裏付けとなる資料を踏まえ、事実関係を把握し、これを前提として法律を適用するとどのような結論を導き得るかを検討する必要があります。

まずは、ご相談下さい。トラブル・紛争の早期解決に向け、共に一歩を踏み出しましょう。

(参考)
民事事件はどのような過程を経て、解決されるのでしょうか。弁護士はその過程にどのように関わるのでしょうか。 

民事事件の解決過程と弁護士の関与

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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