過失割合

交通事故により発生した損害(正確にはこれを金銭的に評価した金額)が定まったとしても、それだけで損害賠償金額が確定するとは限りません。

 

過失相殺

例えば、AとBの交通事故により、被害者Bには100万円の損害が生じたものの、Bにも交通事故発生に一定の落ち度があり、双方の過失割合を分析すると、Aは90パーセント、Bは10パーセントの過失がそれぞれあったものと認められる、とすれば、どうでしょうか。

Bにも事故発生、ひいては損害の発生に責任があったと認められる以上、損害全額の賠償請求を認めるのは公平に反すると言えます。

そこで、被害者にも過失がある場合、損害額から被害者自身の過失相当部分を控除することになります(過失相殺。民法722条1項)。前記の例では、Bに10パーセントの過失があるわけですから、損害額が100万円としても、賠償請求できるのは90万円となります。

 

素因減額

このような考え方は、被害者に事故の発生について過失があった場合に限らず、より広く適用されています。

例えば、被害者Bに、もともと負傷による治療期間が長期化するような何らかの身体的要因があり、それがゆえに通常想定される期間を大幅に超えた通院治療を要した、とすれば、発生した損害の全てを加害者に賠償責任を負わせるのはやはり公平に反するのではないか、と考えられます。

そこで、このような被害者の身体的要因は、事故発生に対する過失ではないものの、「損害の発生・拡大に寄与した素因」として、やはり賠償額の減額要素として考慮されることになります。

なお、このような過失とは言えない被害者の身体的要因について、最高裁判所は、疾患にあたらない場合には特段の事情がない限り斟酌できないという判決を示しており、一定の歯止めが設けています。

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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