不動産賃貸借に関するトラブル・紛争(個人の皆様に)

不動産(土地及び建物)の賃貸借には、賃貸人(貸し主)として関与する場合と、賃借人(借り主)として関与する場合があります。不動産の賃貸借契約に関して、次のような紛争が生じ得るでしょう。

 

賃貸人(貸し手)の立場から

賃貸借契約は、ある程度、長期間にわたって継続するため、契約当事者である賃借人の状況にも変化が生じ得ます。賃借人による賃料の支払いが滞ることもあるでしょう。賃借人にとって、約定の賃料を支払うことは契約上の義務(債務)のうち最も重要なものであり、賃貸人は履行を請求せねばなりません。

賃貸人の請求に賃借人が応じない場合、賃貸人はどうしたら良いでしょうか。賃料支払請求に関して、訴訟手続などの法的手続を選択することも考えられます。賃料不払いを続ける賃借人との関係を解消するべく、賃貸借契約自体を解消し(契約の解除)、退去を求める(明け渡し請求)などするべき場合もあるでしょう。これらを実現するために、訴訟手続などの法的手続を選択することも考えられます。

賃貸人が訴訟手続で勝訴しても、なお賃借人が賃貸物件の明け渡しに応じないとすれば、どうでしょうか。裁判所の強制執行手続(民事執行手続)を通じて、判決内容を実現することを検討するべき場面です。

以上の例に関し、賃借人の所在が不明であり、というケースもあるでしょう。このような場合、解決に向けて賃借人の所在を調査することも必要となります。

 

賃借人は約定どおりの賃料を支払っているとしても、賃貸人からすれば、そもそも賃料額が低額過ぎるとして不満がある場合もあるでしょう。例えば、先代から相続した不動産が賃貸借に供されている、そして、賃料額は数十年にわたり増額改定されていないという場合、他の近隣物件に比べ、賃料額が低額に過ぎるのではないか、と考えられる場合、どのように対処するべきでしょうか。

このような場合、まずは賃借人と契約内容の変更について協議するべきですが、なお解決できない場合、賃料の増額改定に向けて、借地借家法上の制度を利用することも考えられます。

 

賃借人(借り手)の立場から

賃貸人から、突如として賃貸物件の明け渡しを求められた場合、賃借人は、これに応じる必要はあるでしょうか。

不動産の賃貸借契約(借地、借家)のうち一定範囲のものは、借地借家法によって、正当理由が認められない限り、賃貸人が一方的に契約を終了させることはできない、とされています。そこで、賃貸人の契約終了の主張に正当理由が認められるのか否かを検討する必要があります。立退料の支払いやその金額の妥当性が問題となることもあるでしょう。

 

また、賃借人において賃料の支払いを怠っている場合、これは賃貸人において、賃貸借契約を解除できる理由となり得ます。

ただし、賃貸借契約は、契約当事者間の信頼関係に基づき長期間にわたり存続することが想定される契約類型であることから、賃借人において賃料不払いがあったとしても、なお契約当事者間の信頼関係を破壊するほどのものではない場合には契約解除はできないと考えられますので、このような観点から契約解除の効力は生じないのではないかは検討されるべきでしょう。

 

また、昭和後期、平成初期など日本経済の好況期に賃貸借契約を締結したような場合、現在では、近隣物件との比較において、賃料が高額過ぎると考えられる場合もあるでしょう。

このような場合、賃料の減額改定に向けて、まずは契約当事者間で協議するべきですが、なお解決できない場合には借地借家法上の制度を利用することも考えられます。

 

事実関係の把握と解決見通しの検討

賃貸借契約当事者間のトラブル・紛争を法律問題として解決することを目指すのであれば、裏付けとなる資料を踏まえ、事実関係を把握し、これを前提として法律を適用するとどのような結論を導き得るかを検討する必要があります。

まずは、ご相談下さい。トラブル・紛争の早期解決に向け、共に一歩を踏み出しましょう。

 

(参考)
民事事件はどのような過程を経て、解決されるのでしょうか。弁護士はその過程にどのように関わるのでしょうか。 

民事事件の解決過程と弁護士の関与

 

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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