コラム

99 平成29年民法改正(4) 保証が変わる⑦

2019年07月17日

先回からの続き

 平成29年5月の民法改正では、保証人保護のため、保証意思確認に関する改正も行われました。改正法は次のとおりです。

(公正証書の作成と保証の効力)
第465条の6 
1項 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2項 (省略)
3項 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

 

 上記のとおり、主債務が事業のために負担した貸金などの債務である保証契約(あるいは、主債務の範囲に事業のために負担する貸金などの債務が含まれる根保証契約)は、保証人となる者が法人ではない(つまり保証人となる者が個人である)場合、保証人となる者が、保証契約締結に先立ち、契約締結日前1か月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ効力を生じないこととなりました。

 保証人が安易に保証契約を締結することを防ぐ趣旨であることは明らかです。

 改正の経緯を解説する「一問一答民法(債権関係)改正」(筒井健夫氏・村松秀樹氏編著)には、「保証契約は個人的情義等に基づいて行われることが多い」、「保証人の中には、そのリスクを十分に自覚せず、安易に保証契約を締結してしまった者が少なくないと指摘されている」、「法制審議会民法(債権改正)部会の審議においても、このように安易に保証人になってしまうことにより生活の破綻に追い込まれる事態を抑止するため、民法上、何らかの措置を講ずべきであるとの意見が大勢を占めた」と記載されているところです。

 

 今後は、事業のために負担した債務を個人が保証する場合には、原則として、保証契約を締結する前に、公正証書でもって保証意思を明確化することが要求され、要件を欠く場合、保証契約は無効となります。

 

 ただし、例外的に、公証人による保証人の保証意思確認が不要とされる場合があります。

 まず、主債務者が法人である場合においては、主債務者である法人の「理事、取締役、執行役又はこれらに準じる者」、などです(改正民法465条の9)。このような立場にある個人は、類型的に、主債務者たる法人の事業の内容や財務状況を把握しているはずであり、安易に保証人となるおそれは乏しいと考えられるためでしょう。

 また、主債務者が個人である場合においては、「主たる債務者と共同して事業を行う者」、あるいは「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」です。

弁護士 八木 俊行

伏見通法律事務所
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