コラム

94 平成29年民法改正(4) 保証が変わる②

2019年07月12日

先回からの続き

 このように、誰かの債務を保証するという行為は、保証人となる者にとってはリスクが高く、経済的メリットは乏しいと考えられます。

 それにも関わらず、なお保証に応じるのは、例えば、子供の債務について親が保証人となるなど、保証人となる者と主債務者との間に何らかの強い人的関係があることが理由となっている場合も多いのでしょう。

 そうすると、保証人の判断に、必ずしも経済的合理性があるとは言えない場合も多いのではないでしょうか。

 その反面で、主債務が弁済、あるいは消滅時効などにより消滅すれば、保証債務も消滅するというように、保証債務は、主債務と運命を共にする性質を有しますので、保証人の責任は、長期間にわたって存続する場合が多いと言えます。

 このような「保証」の特徴からすると、法制度によって保証人を保護する必要性は高い、と言えるのでしょう。

 

 過去に目を向ければ、例えば平成16年の民法改正において、保証契約は書面によらなければ効力が生じない、と定められた経緯もありました(民法446条2項)。

 一般的に、契約は、双方当事者の意思の合致のみで成立するものとされ、契約書を作成することは契約の成立要件とはされていません。すなわち、契約書の存在は、契約が成立したことを証明する証拠に過ぎず、契約書が存在しないからと言って契約が成立していないということにはなりません。

 そのような中、平成16年の民法改正において、保証契約に限っては、債権者と保証人の意思の合致のみでは成立せず、書面で合意することが必要とされたわけですが、その趣旨は、保証人が安易に、軽率に保証契約を締結する事態を防ぐため、つまり保証人を保護するため、と説明されます(我妻・有泉コンメンタール民法第3版828頁)。

※ただし、同文献では、保証人が保証意思の不存在を主張するケースのほとんどで書面自体は存在するのであるから、保証契約の成立要件として書面を要求したとしても、保証人の保護にはならない、とも指摘されているところです。

 

 平成29年5月の民法改正に際しても、保証に関する改正がなされ、新たな制度がいくつか創設されました。

 改正事項は多岐にわたりますが、その中でも保証人の保護を目的とした改正(新たな制度の創設)が重要と思われます。

 そこで、保証人の保護を目的とした改正のうち主なものを、「保証人に対する情報提供に関する改正」と、「保証意思確認に関する改正」に分けてご紹介したいと思います。

続く

弁護士 八木 俊行

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