コラム

93 平成29年民法改正(4) 保証が変わる①

2019年07月11日

 平成29年5月の民法改正では、保証についても改正がなされ、新たな制度がいくつか創設されました。

 

 そもそも、「保証」とはどのようなものでしょうか。

 法律用語の意味は、世間的にはあまり知られていないのではないか、と思われますが、その中でも「保証」の意味は、広く知られているのではないでしょうか。

 民法は、「保証」について次のように定めています。

(保証人の責任等)
第446条
1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2項 (省略)

(保証債務の範囲)
第447条
1項 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2項 (省略) 

 

 これらの条文が定めるのは次のようなことです。

 例えば、事業者Aが、金融機関Bに対し、事業資金とするべく1000万円の融資を申し入れた場合、Bは、Aが将来にわたって約定どおり返済するのか不安を覚えるのは当然でしょう。そこで、Bとすれば、Aが約定どおりに返済しない場合に備えて、債務の担保として、例えば保証人を立てることを要求する、ということが考えられます。

 そこで、Aから依頼された甲が、AのBに対する債務を保証したとすると、甲は、Aが何らかの理由により約定どおりの支払いができなくなった場合、Bから、Aと同じく、貸金1000万円の返済を請求されることになります(民法446条1項)。Aの債務が利息や遅延損害金を生じる性質のものであったとすれば、甲の責任は、元本たる1000万円のみならず、利息や遅延損害金にまで及びます(民法447条1項)。

 「保証」はこのようなものであるため、誰かの債務を保証することは極めてリスクが高い行為である、と認識されているはずです。

 

 「保証」は、主債務者にとってみれば、第三者が自身の債務を保証してくれることで、希望通りに融資を受けられるなどするわけですから、当然ながらメリットがあります。

 では、保証人にとってはどうでしょうか。

 保証人の中には、保証することのリスクを踏まえてなお収益が出るように金額が設定された保証料を得て保証するなど、これを業として行う場合もあるでしょうが、そうでない限り、保証人にとって、誰かの債務を保証することに経済的なメリットがあるとは思われません。

 それにも関わらず、なぜ誰かの債務について保証することになるのでしょうか。

続く

弁護士 八木 俊行

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