コラム

88 平成29年民法改正(3) 民事法定利率が変わる①

2019年07月1日

 本日は2019年7月1日です。

 平成30年(2018年)7月に、民法のうち相続法に関する部分が改正されましたが(参照 ▷コラム59「平成30年民法改正(1) 自筆証書遺言の方式緩和」 ▷コラム61「平成30年民法改正(2) 配偶者居住権の創設①」など)、平成30年民法改正の大部分が、本日、2019年7月1日から施行されます。

 

 また、これに先立つ平成29年(2017年)にも民法は改正されています(▷コラム65「平成29年民法改正(1) 何が変わるのか①」)。重要な改正事項の1つとして、民事法定利率に関するものがあります。

 かねて、民法では、民事上の債権に適用される法定利率は年利5パーセントとする旨が定められていました(改正前民法404条)。
 そして商法では、民法404条の特則として、商取引によって生じた債権(商事債権)に適用される法定利率は年利6パーセントとする旨が定められていました(改正前商法514条、商事利率)。

 年利5パーセントの民事法定利率は、民法制定当時(1896年、明治29年)の市中における一般的な貸出金利を参考に定められたものとされ、その後、見直しがされないまま現代へと至っており、そのため、ことに平成以後の超低金利政策のもと、社会の実態とは乖離が生じていました。

 そこで、現在の市中金利の水準を考慮して、法定利率を引き下げることになったのです。

 

 改正により、民事債権に適用される法定利率は年利3パーセントとされます(改正後民法404条2項)。

 また、これまで、民事債権と商事債権では適用利率が異なりましたが、改正により、適用利率は一本化されることになりました(商法514条は廃止)。

 さらに、この年利3パーセントという数字は固定的なものではなく、将来的に変動する市中金利と乖離する事態を防ぐため、今後、3年ごとに法定利率は自動的に見直しがなされる、ということになりました。

 民事法定利率の変動の仕組みは、3年を1期とし、当期の法定利率を、直近期の「基準割合」と、当期の「基準割合」の差に相当する割合を、直近期における法定利率に加算、あるいは減算した割合とする、というものです(改正民法404条3項及び4項)。この差に相当する割合に関し、1パーセント未満の端数は切り捨てるものとされていますので、差が1パーセント未満の場合は法定利率に変動は生じない、ということになります。

 そして、「基準割合」とは、「過去5年間における短期貸付けの平均利率の合計を60で除して計算した割合として法務大臣が告示するものをいう」とされています(改正後民法404条5項)。

 

 したがって、今後は、3年に一度のこととはいえ、市中金利たる短期貸付利率が変動すると、これに合わせて民事法定利率も変動する可能性がある、ということになります。

 ただ、3年を1期として、前期と当期とで、過去5年間の短期貸付金利の平均値を比較して1パーセント以上の差異が生じている場合のみ法定利率の変動が生じ、そうでなければ法定利率の変動は生じない、ということですから、ここ数年の統計数字を見る限り、法定利率の変動は容易には生じない、ということとなるように思われます。

続く

弁護士 八木 俊行

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