コラム

83 2019年6月民法改正・特別養子縁組の対象拡充

2019年06月11日

 2019年6月8日毎日新聞朝刊に「特別養子縁組利用促進へ」とのタイトルのもと「経済的事情や虐待などから実親と暮らせない子のための特別養子縁組制度の対象年齢を『原則15歳未満』に引き上げることなどを柱とする改正民法などが7日、参院本会議で可決・成立した」との記事が掲載されていました。

 「特別養子縁組」をご存知でしょうか。

 

 民法は、親子の関係について定めます。親は未成年の子の親権を有すると共に、子を養育するべき義務を負う、また、子は、親を被相続人とする相続において法定相続人となり、親は、子を被相続人とする相続において一定の場合に法定相続人となるなど、親子関係について様々な法的効果を定めます。

 このような親子関係は、出生に至る経緯に着目した生物学的な血縁関係を根拠に生じるものと、出生後の縁組により生じるものに分類されます。

 そして、縁組は、普通養子縁組と特別養子縁組に分類されます。

 普通養子縁組は、関係当事者の合意によって成立するものであり、縁組成立後も、養子と実方の血族の親族関係は養子縁組後も存続します。つまり、養子にとっては実親と養親がいるということになります。

 これに対して、特別養子縁組は、「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるとき」(民法817条の7)など一定要件を満たす場合に、養親となるべき者の請求を踏まえ、家庭裁判所の審判によって成立するものであり、縁組成立によって養子と実方の血族の親族関係は終了するという効果を有するものです。

 

 このような特別養子縁組の要件として、子の年齢について、家庭裁判所に対する特別養子縁組の請求時にすでに6歳に達している者は養子とはなれない、ただ、その者が8歳未満であり、6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は例外的に認める、などとされていました(民法817条の5)。

 その趣旨について、特別養子縁組の成立によって、以後、養親が唯一の親として、その子を、養親の家庭で実子同様に監護養育していくことになるのだから、原則として子が社会的成熟を始める契機である就学年齢に達していないことが相当であると考えられるためである、などと説明されていました(新版注釈民法(24))。

 

 前記新聞記事によれば、養子となる者の年齢制限について、「原則として15歳未満であること」へ改正されると共に、15歳~17歳の者についても、養子となる者の同意や、15歳に達する前から養親となる者と暮らしていることを条件に特別養子縁組における養子となることを認めるよう改正された、ということです。

 

 また、特別養子縁組の成立には、原則として、養子となる者の実親の同意も要件とされます(民法817条の6)。

 この要件について、これまで実親が、いったん特別養子縁組に同意した後、6か月にわたる養親(養親となるべき者)による養子(養子となるべき者)の試験養育期間中に、同意を撤回するケースがあり、身分関係が不安定になるという弊害があったことから、改正により、実親は、特別養子縁組に同意してから2週間経過後は同意を撤回できないこととなる、ということです。

 

 2019年6月の民法改正は特別養子縁組の対象を拡充するものと言えますが、改正法は今後、公布から1年以内に施行される、ということです。

 

弁護士 八木 俊行

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