コラム

116 【相続問題】遺言がある場合・ない場合②

2022年12月16日

被相続人の財産に関し、契約や遺言がある場合にはその効力によって、遺言等がない場合には、被相続人死亡の事実によって、承継が生じます。                                                                                                                                          このような相続による財産の承継に関し、日本では、裁判所の関与は必須のものではありません(必須となるのは、被相続人が自筆証書遺言を作成していた場合における家庭裁判所での遺言の検認手続くらいではないでしょうか)。                                                                                                  相続に関し、法定相続人間で紛争に至った場合、その解決方法として、裁判所における手続を利用することを選択する、ということはあり得ることですが、当事者が選択しない限り、裁判所が関与することはありません。                                                                             相続とは、そういうものなのだ、と思っておりました。                                                                                                      

 

しかしながら、以前、あるご縁で、被相続人が、海外に預貯金や株式等の財産(遺産)を保有する場合、相続人は、遺産を承継するためにどのような手続を経る必要があるのかを検討する機会がありました。                                                                                                                           それは英米法系の国での問題であったのですが、その国では、日本とは全く異なり、概要、①裁判所に遺産の管理人を選任してもらうことが必須である、②管理人は、被相続人に帰属していた負債を精算するなどして、残った相続財産を相続人に引き継ぐ、という制度になっている、ということでした。このような制度を「プロベイト(Probate)」というのだとか。なお、国によっては、日本とは法定相続人の範囲も微妙に違うようでした。                                                                                

 

日本でも、裁判所に、何らかの手続を求めて申し立てをする際には、所定の書式による申立書を作成して提出することや、適宜、関連資料を過不足なく添付することが必要となりますが、上記の国に所在する財産を相続人が承継するためには、例外なく、このような負担が生じるわけです。提出するべき書類は、当然ながら、その国の国語で作成する必要があるのでしょう。そして、当時、調べた範囲では、日本国内に、このような手続に関するサービスを提供する業者は、あまり見当たらないようでもありました。                          

 

被相続人が海外の事情に精通しているからといって、相続人も精通しているとは限りません。相続による在外資産の承継に関するハードルは極めて高いように思われましたし、このようなハードルの高さは、広く周知されるべき事項のように思われました。

続く

弁護士 八木 俊行

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