コラム

62 平成30年民法改正(2) 配偶者居住権の創設②

2019年04月21日

先回からの続き

 配偶者居住権制度は、これらの問題点を解消し、遺された配偶者を保護するための制度です。

 法改正の経緯や概要を示す書籍(堂園幹一郎、野口宣大編著「一問一答相続法」商事法務)では、配偶者居住権の制度は、「配偶者のために居住建物の使用収益権限のみが認められ、処分権限のない権利を創設することによって、配偶者が居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価額で居住権を確保することができるようにすること等を目的とする」(以上、引用)、と説明されています。

 

 前記の通り、配偶者居住権は、まず「①遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき」に成立します。遺産分割は、当然ながら法定相続人間の協議によっても成立しますが、相続人間の協議が成立しない場合には、家庭裁判所が審判で決することもできますから、親族間に対立が生じている場合であっても、家庭裁判所は、その判断によって配偶者保護を実現できる、ということになります(ただし、条文上、一定要件を満たすことが求められます)。

 また、配偶者居住権は、「②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」にも成立しますから、被相続人が、配偶者の将来の生活に備え、生前にその旨の遺言を作成することでこのような権利を取得させることもできます。

 

 配偶者居住権は、財産的価値のある権利ですから、配偶者がこれを取得する際には一定の金銭的評価が行われることになります。居住用建物の所有権を取得する場合に比べれば低額となることは当然ですが、ならばどの程度の金額と評価されるのか、と言えば、現時点では明確化していません。この点は、改正法が施行され、実務が運用される中で、相場が形成されていくのでしょう。

 

 「配偶者居住権」に関する改正法は、2020年(令和2年)4月1日から施行されます。平成30年7月改正法の大部分は2019年(令和元年)7月1日から施行されますが、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」に関する改正法は、周知のため、やや後れて施行されます。

弁護士 八木 俊行

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