コラム

57 結婚と離婚の法律問題(15) 婚姻の効力・法定相続分と遺留分

2019年04月15日

先回からの続き

⑥法定相続分と遺留分

 人(自然人)は、法律上の権利義務の主体です。人が死亡すれば、権利義務の主体がいなくなってしまうため、その人(被相続人)に帰属していた権利義務の承継のために相続が開始します。
 そして、被相続人の配偶者は、被相続人の相続に関して常に相続人となります。

 民法第890条は次のように定めています。 

(配偶者の相続権)
第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。 

 

 この条文は、「第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする」と定めていますが、民法第887条は、被相続人の子が相続人となることを定め、民法第889条は、被相続人に子がいない場合には被相続人の親など直系尊属が相続人となる旨を、また直系尊属もいない場合には被相続人の兄弟姉妹が相続人となる旨を定めています。

 したがって、被相続人の配偶者は、①被相続人の子と、②子がいない場合には被相続人の直系尊属と、③直系尊属がいない場合には被相続人の兄弟姉妹と、同順位で相続人となる、ということになります。 

 

 そして、民法第900条により、配偶者の法定相続分は、①被相続人の子と同順位で相続人となる場合は2分の1、②被相続人の直系尊属と同順位で相続人となる場合は3分の2、③被相続人の兄弟姉妹と同順位で相続人となる場合は4分の3とされます(民法第900条)。

(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。 

 

 配偶者を被相続人とする相続において常に法定相続人となる、という点は、婚姻の重要な効力と言えるでしょう。 

続く

弁護士 八木 俊行

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