コラム

33 不貞行為と離婚慰謝料(1)

2019年02月20日

 今朝の毎日新聞に、「不倫相手への請求認めず 離婚慰謝料 最高裁、逆転判断」との見出しで、昨日(平成31年2月19日)の最高裁判決についての記事が掲載されていました。

 記事によれば、「離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料を、別れた配偶者の過去の不倫相手に請求できるかが争点となった裁判の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は19日、『特段の事情のない限り請求できない』との初判断を示した。慰謝料を請求していた原告男性の逆転敗訴が確定した。」ということです。

 

 一般的には、ある既婚者(以下、「甲」と言います)が第三者(以下、「Y」と言います)と不貞行為に及んだ場合、他方配偶者(以下、「X」と言います)は、この第三者Yに対して、損害賠償として慰謝料の支払いを請求できると考えられています。
 なぜならば、婚姻関係にある男女は、配偶者の貞操を独占する権利を有するところ、第三者の行為は、この権利を侵害していると考えられるからです。
 そして、不貞行為の結果、夫婦関係が破綻して離婚するに至った場合には、他方配偶者は、当該第三者に対し、離婚したことによる精神的苦痛も含めて慰謝料の支払いを請求できると考えるのが一般的であったと考えられます。
 このような状況において、最高裁判所平成31年2月19日判決は、他方配偶者Xは、第三者Yに対し、離婚による精神的苦痛についての慰謝料を原則として請求できない、との判断を示したことになります。

 

 判決文は、最高裁判所のHPに掲載されています。
 これによれば、事案としては、前記の例にならえば、他方配偶者Xが、既婚者甲と第三者Yの不貞行為の存在を認識した後、不貞関係は解消され、その後も他方配偶者Xと既婚者甲は同居生活を継続した、もっとも、その約4年後に、他方配偶者Xと既婚者甲は別居を開始し、調停手続を経て、その約1年後に離婚が成立した、という経過をたどったとされています。
 このような事実関係において、最高裁判所は、次のような判断を示しました。

 「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
 したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
 以上によれば、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。」

 この判決の位置付けなどについて、考えてみたいと思います。

続く 

弁護士 八木 俊行

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