コラム

29 待ち続けた結果は権利消滅(2)~債権回収の話6~

2014年07月3日

前回の続き)

 消滅時効には重大な効果が伴いますので、債権管理の上では「債権を消滅時効にかけない」ことが重要です
  そのためには管理対象となる債権の消滅時効がどの時点で完成するのかをあらかじめ把握しておかなければなりません。
 また、債務者との後日の紛争に備え、この問題の結論を左右する事実関係について証明できるだけの資料(証拠)を準備しておくことが必要です(裁判所の内外を問わず、証明できない事実は存在しないものしてと扱われるリスクがあるためです)。

 消滅時効は、一定の期間の経過により権利の消滅という効果を発生させる制度ですので、当該債権の消滅時効がいつ完成するのか、を検討する上では、①「一定の期間」はいつから起算されるのか(起算点の問題)、②「一定の期間」とは具体的にはどれだけの長さであるのか(時効期間の問題)、の2点がまず問題になります。

起算点の問題 
  権利の消滅時効は、「権利を行使することができる時」(民法第166条1項)から進行します。
 前回コラムの事例では、BさんはAさんに対して平成16年5月20日に貸金を返済すると約定していました。
 したがって、AさんはBさんに対して平成16年5月20日に貸金の返済を請求できるわけですから、「権利を行使できる時」とは平成16年5月20日となります。

※ただし、民法第140条により、「10年」という期間を検討する際には、初日は算入しません。そのため平成16年5月21日から起算します。

時効期間の問題 
  債権(民事債権)の消滅時効期間は原則として10年です(民法第167条1項)。なお、商事債権の消滅時効期間は5年です(商法第522条)。
 したがって、AさんのBさんに対する貸金債権が民事債権であるとすれば、消滅時効期間は10年となります。

Aさんが貸金業を営んでいる等の事情があれば、貸金債権は商事債権となり、消滅時効期間は5年となります。

 では、10年はいつ満了するのでしょうか?

 民法第143条2項は、年の初めから期間を計算しない場合は、その期間は、最後の年における起算日に応答する日の前日に満了する、と定めています。 そうすると、平成16年5月21日から起算して10年は、平成26年5月20日に満了する、ということになります。

  以上から、前回コラムの事例では、AさんのBさんに対する貸金債権は、平成26年5月20日に消滅時効が完成する、ということになります。
 

 では、例外的に、起算日から10年が経過したにも関わらず、AさんがBさんに対して貸し金の返還を請求できるという場合はあるでしょうか。どのような事情がある場合、そのような例外的な結論が認められるのでしょうか。

続く 

弁護士 八木 俊行

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