コラム

64 平成30年民法改正(3) 配偶者短期居住権の創設②

2019年04月24日

先回からの続き

 改正法の条文に則して、「配偶者短期居住権」の特色を何点か指摘したいと思います。

 

<成立>
 まず、「配偶者短期居住権」が成立するのは、配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた」場合に限られます(改正民法1037条1項)。

 「被相続人の財産に属した建物」とは、被相続人が単独で所有権を有する場合のほか、共有持分を有する場合を含む、と考えられます。したがって、夫婦が建物を共有していた(それぞれが共有持分を有していた)ような場合であっても、「配偶者短期居住権」は成立し得ることになります。

 また、配偶者が「無償で居住していた」ことが要件となりますから、配偶者が、相続開始前より、建物に居住することについて使用料などの対価を負担していた場合は、「配偶者短期居住権」は成立しないと考えられます。なお、このような場合、被相続人と配偶者の間に賃貸借契約などの契約が存在していたものと考えられ、これが相続開始後も存続すると考えることで、配偶者の保護は図られることになる、と考えられます。

 

<効果>
 次に、「配偶者短期居住権」が成立する場合、配偶者は、建物を「無償で使用する権利」を有します(改正民法1037条1項)。したがって、他の相続人に対し、建物を使用することの対価を支払う必要はありません。

 ただし、配偶者は「居住建物の通常の必要費を負担」することが求められます(改正民法1041条、1034条)。そのため、配偶者は、建物の保存に必要な修繕費、建物、建物の敷地の固定資産税といった費用については負担しなければならないと考えられます。

 

<終期>
 そして、「配偶者短期居住権」の終期は次のとおりとされます(改正民法1037条1項1号及び2号)。 

①居住建物について、配偶者が相続人として遺産共有持分を有する場合 

 →「遺産の分割により建物の帰属が確定した日」、あるいは「相続開始の時から六箇月を経過する日」のいずれか遅い日まで 

②居住建物について、配偶者が相続人として遺産共有持分を有さない場合
※例えば、被相続人が、居住建物を第三者に取得させる旨の遺言を作成していたたような場合が考えられます) 

 →居住建物取得者が配偶者短期居住権消滅を申し入れをしてから6か月が経過する日まで

 

 

 配偶者短期居住権は、関係者による合意などなくとも、一定の要件を満たす場合に当然に成立する権利であること、そしてこの一定要件を満たす場合は多いと考えられることから、相続実務に大きな影響を及ぼすものと見込まれます。

 平成30年7月改正法のうち、配偶者短期居住権に関する部分は、2020年(令和2年)4月1日より施行されます。

弁護士 八木 俊行

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