コラム

37 親権者の懲戒権(1)

2019年02月25日

 幼い子どもが親の虐待によって命までも奪われる、という事件が後を絶ちません。

 これを受けて、政府は、児童相談所の相談員を増員するなどの対策を検討しているとの報道がありました。また、有志の国会議員が、政府に対し、親権者の懲戒権に関する民法の規定を削除する方向で法改正するよう申し入れ、政府は検討する方針を示した、とのことです。

 ここで問題となっているとおり、現在の民法に、親権者が子を懲戒することができる旨が明記されていることをご存知でしょうか。

 民法には次のような規定があります。

 

<民法>

(監護及び教育の権利義務)

第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

(懲戒)

第822条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

 

 ちなみに、民法第822条は、平成23年の法改正前は次のようなものでした。

 

<平成23年改正前民法>

(懲戒権)

第822条 

1 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。

2 子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。

 

 このように、以前は、親権者が自ら子を懲戒するのみならず、家庭裁判所の許可を得て、「懲戒場」に入れることさえできる、とされていました(ただし、「懲戒場」に相当する施設は存在せず、この規定は事実上、機能していなかったようです)。 

続く

弁護士 八木 俊行

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